ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 原発の警戒区域での空き巣が前年比998%の増加になったわけ
先日「平成23年の犯罪情勢」という資料が警察庁から発表されました。前年の犯罪情勢についてまとめた資料として、毎年5月中旬頃に発表されます。しかし、今年は1ヶ月遅れて、ようやく先週発表になりました。今年の資料は、東日本大震災の被災地における犯罪情勢が、トピックとして掲載されています。今回は、その内容からピックアップしてみたいと思います。
東日本大震災の被災地での犯罪情勢
被災3県として、岩手、宮城、福島に着目し、全国の犯罪情勢とは別に統計が収録されています。刑法犯の認知件数を見ると、全国統計と同様にどの県も減少しています。しかし、減少率は全国統計とは異なるようです。
3〜12月の全国の刑法犯の減少率が6.6%であったのに対し、岩手県が15.4%、宮城県が17.7%、福島県が20.0%それぞれ減少していて、全国に比べても犯罪減少率は大きかったことがわかります。一方で、福島県の侵入盗だけは増加しています。福島第一原発周辺の警戒区域では、住民の避難が続き、住宅の空き巣、スーパーやコンビニの出店荒しの増加が目立ちます。
空き巣については、岩手県が1.1%の減少、宮城県が11.0%の減少、福島県が84.4%の増加となっています。また、出店荒しについては、岩手県が23.3%の減少、宮城県が3.8%の減少、福島県が19.2%の増加となっています。さらに、警戒区域を管轄する3つの警察署管内での犯罪発生状況は、空き巣が998%の増加、出店荒しが545%の増加と、特に被害が多くなりました。
犯行の条件が揃うときとは
犯罪は次の3つが揃ったときに発生するという、ルーティンアクティビティ理論というものがあります。「犯罪動機を持つ犯行者の存在」、「犯行者が欲するターゲットの存在」、「その空間を見守る監視者の不在」、これらの3つです。ここでいうターゲットとは、人や金品などの犯人が狙うもののことを指します。これらの3つのどれかが欠けたとしたら犯罪は成り立ちません。今回の福島第一原発周辺では、いつもは存在するはずの住人がいなくなってしまったことにより、条件ができ上がってしまいました。別の言い方をすれば、"周囲の目"がなくなってしまったために、犯罪者のやりたい放題になってしまったのです。
コンビニのATMもターゲットになり、岩手県で2件、宮城県で14件、福島県では30件の被害があり、被害額は3県合わせて、およそ6億6900万円に上るとのことです。金融機関も狙われたようですが、被害額はそこまで大きくはなかったようです。
犯罪者をその気にさせないために
「犯罪動機を持つ犯行者の存在」をなくすことは困難です。それ以外の2つの条件を排除することで、被害を減らすことができます。誰がいても構わずに犯行に及ぶような凶悪な犯罪などは当てはまらない場合もありますが、ひったくりや車上ねらい、万引き、空き巣など、ほとんどの犯罪に当てはまります。
皆さんの防犯対策でも、十分に活用していただけるはずです。窓から見えるところにお金や貴金属を置いておかないとか、夜道では後ろから近づくバイクにすぐに気がつくように、携帯画面に気を取られすぎないとか、車を止めるときはバッグなどを助手席に置いたままにしないなど、犯人をその気にさせない工夫が大切です。
セコムIS研究所
セキュリティコンサルティンググループ
濱田宏彰
東日本大震災被災3県に
おける犯罪の増減率
(2011年3〜12月)(警察庁)
子どもの安全ブログ | おとなの安心倶楽部 |
女性のためのあんしんライフnavi |