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古くから人は、自らの財産を脅かす人々の存在に困っていたようです。エジプトや中国の古代文明期には、王の墳墓の建設に携わった奴隷は殺され、王の亡骸を埋葬する際に一緒に埋められたといわれています。当時の王が多くの宝物とともに埋葬されていたことから、これらの副葬品を狙う墓泥棒を防ぐための措置だったとのことです。
また、日本でも、戦国時代には城の情報が敵に漏れないように、築城に携わった人に対し、さまざまな措置をしたそうです。自らに害をなす外敵という存在がいる場合、自分の守りの情報は、その存在に渡してはならないからです。
自らものを作らないファブレス企業
さて、現在テレビやパソコンなどの業界では、世界的にファブレスの動きが広がり、自らモノを作らないようにすることが当たり前になってきています。ファブレスとは、自社で生産設備を持たず、外部の協力企業に生産委託している企業のことです。
ファブレス企業は、生産コストの安い国や地域にある生産専門会社の工場に商品の生産を委託し、そこで生産された商品を買い上げて販売しています。工場への設備投資が不要となることもあり、多くの利益を上げている企業も少なくありません。
モノ作りを得意とする日本のメーカーの中には、ファブレス企業との競争に苦慮しているところもあるようです。
誰が作っても同じ品質が実現できるモノの場合、自ら工場を持たずに他者に生産を委託するファブレスは、経済合理性に合致する良い選択だと思います。日本のメーカーでも、自らの製品生産の一部をファブレスに移行する試みも増えてきているようです。
サービス業はもともとファブレス
サービス業は、サービスを提供するのが役割ですから、元々がファブレスです。サービスを提供するために使う機器を、自ら研究・開発し、そして製造まで行っているサービス企業はほとんどありません。たとえば、宅配便などで使われるトラックは、自動車メーカーで研究・開発、そして生産されており、サービス業である運輸会社はメーカーからトラックを買って宅配便サービスを提供しています。
それでは、ホームセキュリティなどのセキュリティサービスの場合はどうでしょうか。セキュリティを提供している企業も、分類上はサービス業です。そのため、多くのセキュリティ企業では、ほかのサービス業の場合と同様に、メーカーから供給されるセキュリティ機器を使ってセキュリティサービスを提供しています。
セキュリティサービスの特殊性
しかし、セキュリティサービスの場合、必ずしもこれで十分とは言えないのです。泥棒や侵入者など「悪意を持つ存在がいる」ことを前提に、それから身や財産を守るサービスを提供するのがセキュリティサービスです。そのため、冒頭で述べたのと同様、「守りの情報を外部に渡してはならない」という特殊性が宿命的に存在するのです。
セキュリティ機器を提供するメーカーの機器は、犯罪を行おうとする人でも買うことができます。そのため、それを購入し、弱点を研究することも不可能ではありません。セキュリティのことを本当に考えるならば、これらへの対応も十分に考える必要があります。
高いセキュリティレベルを実現するために必要なこと
セコムは、サービス業であるにも関わらず、センサーなど、セキュリティサービスを提供するための機器について、研究・開発するための拠点を持ち、加えてこれらの工場生産までも手がけています。これは「守りの情報を外部に渡してはならない」を実現するためのものであり、品質の高いセキュリティサービスを提供するために欠かせないのです。
それに加え、高いクオリティを維持するため、機器の取り付け工事、24時間監視、緊急対処、メンテナンスまでトータルに安全を生産するという、徹底した自社生産・自社運用にこだわっています。
機器を他者から購入するファブレスは、一般的には、コストを安くするために有効です。しかしながら「悪意を持つ存在がいる」セキュリティの場合、「守りの情報を外部に渡してはならない」という特殊性から、それは必ずしも良いこととは言えません。「セキュリティをコストのみで選んではいけない」を裏付ける一面です。セキュリティサービスを選ぶ際の参考にしていただければと思います。
(参考)
・現場レポート「『安全・安心』を先端技術で支えるセコムIS研究所」(2012/01/10)
・現場レポート「セキュリティシステムの進化に挑む『セコム開発センター』」(2011/07/05)
・社会システム産業の今「グループの機器製造を担うセコム工業(株)」(2011/11/24)
・セコムニュース「セコムの強み(3) トータルパッケージシステム」(2009/05/15)
セコムIS研究所
セキュリティコンサルティンググループ
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