ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > なぜスポーツバッグで、電車が止まったのか
・スポーツバッグが電車を止めた
先日、東京を走る電車の車両で不審なスポーツバッグが見つかったことが原因で、1時間半にわたってその路線の運転がストップするという事件がありました。通報によって駆け付けた警察官の金属探知機が反応したこともあり、その電車は最寄りの駅で乗客を降ろし、警察の爆発物処理班も出動したとの報道がなされています。
爆発物処理班が調べたところ、このバッグには衣類やハンガー、電子手帳などの品々が入っていただけで、幸いにも危険物は発見されませんでした。しかし1時間半もの間、電車を止める事態となったこともあり、社会への影響は無視できない出来事だったと思います。
さて、それではなぜ「この置き忘れられたスポーツバッグ」が「不審物」と判断されて、爆発物処理班までもが出動する大騒ぎになったのでしょうか。 電車へのスポーツバッグの置き忘れくらいは、割とあると思います。このスポーツバッグのどこが不審だったのでしょうか。
・不審物とは何か
本コラムで、先に書かせていただいた「不審者はなぜ不審なのか」で取り上げた不審の考え方に準ずると、「不審物」とは「その場所にいる人が、おかしいと感じ、そのおかしい感じ(不審感)のために、なんらかのアクションをとりたくなる物」であると言えます。
この観点に立つと、たとえば、異臭がする物、異音がする物などは、「その場所にいる人が、おかしいと感じ、そのために、なんらかのアクションをとりたくなる物」であるため不審物であると言えます。しかし、通常の場合、スポーツバックは、電車の車内に置き忘れてあったとしても、不審物であるとは判断されにくいかと思います。
・スポーツバッグが不審物とされた理由
さて、このあたりで種明かしをしましょう。先に電車の中で見つかったスポーツバッグが「不審物」と判断された理由は、このバッグが置いてあった「場所」が、車両と車両の連結部だったからです。
通常、電車に乗る場合、よほどの混雑時でも車両と車両の連結部は、ドアで遮蔽され、そこに人が乗ることはほとんどありません。そこに物を置き忘れると言うこともほとんど発生しないと言ってよいでしょう。それゆえ、このバッグを見つけた人が、おかしいと感じ、そのおかしい感じのために駅員に知らせるというアクションを起こしたと言えます。
「不審者」の場合と同様に、人は、「その物がある場所の統計的性質」を把握して、その統計的性質から逸脱した性質の物を「不審物」と判断しているのです。「その場所にあることが」おかしい、不思議である、不自然だ、という判断のためには、普通の時にその場所にある物の性質をよく知っている必要があるのは、不審者の判断の場合と同じです。
・「いつもと違う」に注意
この観点に立つと、ご自分や、ご自宅の防犯を考える場合においても、「いつもと違う」という感じ方が重要になってくることがお分かりかと思います。コミュニティの防犯活動などで、町内をパトロールする時は、自分の家の周りの「常なるとき」の状況をよく把握しておくことです。
そして、「いつもと違う」と感じた時は、地域の交番や、警察相談専用電話「#9110」(急を要するときはもちろん「110番」)に相談してみてください。それが何らかの事件を、事前に防ぐことにつながるかも知れません。
(参考)
・安心豆知識「不審者はなぜ不審なのか」(2010/12/20)
・安心豆知識「警察への緊急通報番号110番」(2009/9/28)
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