４月に入って新年度となり、学校ではちょうど入学式が行われている頃かと思います。子どもたちは新しい学校や、新しいクラスでわくわくしていることでしょう。新しいクラスがスタートする時期にあたり、今回は、子どもの交友関係の把握や、子どもが帰ってこないときの連絡などの場面で役に立つ、クラス名簿の作成・配布について考えてみたいと思います。

　今をさかのぼること４年、2005年に個人情報保護法が施行されました。この際、その目的や具体的ガイドラインの周知が十分になされなかったこともあり、社会全体でこの法律に対する過剰反応が生じて「すべての個人情報を隠蔽する」動きが起こりました。学校をはじめとする教育機関や、町内会組織においても、個人情報の流失を防ぐために名簿の作成をやめ、それによる問題も多く指摘されました。

　このような過剰反応に対し、政府は個人情報保護関係省庁連絡会議を開いて各省庁が自らの管轄する分野についての見直しを行い、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護すること」というこの法律の目的に沿った、より現実的な運用ができるようなガイドラインを発表しています。

　クラス名簿の作成・配布は、方法をあやまらなければ、個人情報保護法の「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護すること」という目的に反するものではありません。先の連絡会議では、あらかじめ本人の同意を得るか、もしくは同意に代わる措置を取ることで、名簿の作成、配布が可能である旨が申し合わされています。

　たとえば、名簿を作るための個人情報収集の前に、その目的や、配布範囲を明確にした趣意書を示し、同意を得た人からのみ情報を収集して、その範囲にのみ名簿を配布するなどです。名簿作成のため、住所、氏名、電話番号などの個人情報を出してくれた人にだけ、他の人の個人情報も教えるようにするという条件をつけることで、情報収集の際の大きなトラブルは発生しないものと考えられます。

　作成した名簿を配布する際にも、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護すること」を目的とした個人情報保護法の趣旨を踏まえつつ配布することを考えてみましょう。たとえば、名簿を配る際に、名簿の扱いに関する誓約書をとることです。この誓約書に、名簿上の個人情報をみだりに第三者に与えない、十分に注意して管理する、将来必要がなくなった場合にも個人情報が漏れないように十分に気をつけた形で破棄するなどの誓約条項を盛り込みます。また、名簿に通し番号をふり、万が一流出した場合どこから流出したかわかるようにするなどの対策を考えてもよいかもしれません。

　クラス名簿の作成と配布は、万が一の時、その情報が子どもの状況を確認するために役立つというプラスの面がある一方で、住所・氏名が流出するなどのマイナスが発生する可能性もあることも十分に考慮し、各保護者が、担任の先生が、責任をもって判断していかなければならない問題となります。個人情報保護法には、どこにも「個人の情報を隠せ」とは書いてありません。子どもの情報をどのように扱うことが、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人（子ども）の権利利益を保護すること」につながるのか真剣に考え、行動すべき時にきているのではないかと考えます。

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甘利　康文