高橋文彦・髙山献

セコムは警備をはじめ、医療や災害対策など広範な事業で社会に貢献しています。優れたサービス開発のための、先端技術の研究を行うIS研究所で活躍する2人の研究員に、入社動機や現在の研究テーマ、仕事環境について伺いました。

高橋文彦

高橋 文彦

ビジョンインテリジェンスディビジョン

プラグマティック・アルゴリズムグループ

髙山献

髙山 献

デジタルプラットフォームディビジョン

デジタルシステムアーキテクチャグループ

未知のものを探求する「研究」を仕事に

高橋文彦・髙山献

――高橋さんの大学での研究内容やセコム入社の動機を教えてください。

高橋:学生時代は、歯科の研修で使う患者に見立てたロボットの開発をテーマに研究していました。子どもの頃に好きだった「ドラえもん」はコミュニケーション能力が非常に優れたロボットだということを、この研究室に入って再認識しましたね。

大学院での研究経験を経て、就職活動では新しいものを作る研究職か開発職を志望しました。警備や医療など事業領域が幅広いセコムでは、自分の専門知識を役立てられる可能性が高く、サービス業なので研究成果を人に使ってもらえるとも考えました。開発でなく研究を選んだのは、より新しいものをゼロから生み出したい気持ちがあったからです。東京の吉祥寺に近く通いやすい勤務地やフレキシブルな裁量労働にも惹かれました。

  • 裁量労働制
    研究職は、労働時間や仕事の進め方が個人の裁量に委ねられる裁量労働制を採っています。また、日頃から上司やメンター、グループメンバーとのミーティングなどで研究業務の進捗を共有し、必要なときには随時相談ができる体制です。出退勤/実働時間を把握するシステムなどを整備し、社員の健康に配慮しています。

――社会貢献できる研究の場としてセコムを選んだのですね。髙山さんはいかがですか?

髙山:ものづくりに興味があり、元はプログラマー志望でした。しかし、大学院でコンピューターサイエンスを専攻して、ソフトウェアの信頼性を研究するうちに、「研究職っていいな」と感じ始めたんです。研究の面白さは、自律的に方向や手法を定め、未知のものを探求できることだと思います。

博士課程からさらに研究の道を進もうと考え、セコムの警備システムの信頼性に自分の研究との共通点を感じて応募しました。専門性を活かして貢献できることが決め手になりました。修士2年のとき、セコムの研究員が大学に来て、そこで研究や職場の雰囲気などについて話をする機会があったのもきっかけの一つでしたね。

――入社後の、基礎技術研修からOJTまでの新人研修はいかがでしたか?

高橋:現在の新人研修は、研究所のいろいろな部署を回って人や仕事を詳しく知ることができます。私の入社当時は、研究室配属前に半年間の開発部門で研修がありました。開発の仕事を知ったことで「自分の研究の先にある商品開発」をイメージしやすくなりました。

髙山:私は研究所内で1年間、画像やセンサーなどの研究を行っている各部署の先輩研究者に1カ月半ずつ付いてOJTを行いました。そのとき、大学での自分の専攻は小さな領域でしかなく、他にも多くの分野があることを実感し、自分の研究と他の研究を結びつけたら面白いことができそうだと広く興味を持ちました。

研修では研究内容だけでなく「セコムの研究者がどのように研究をしているか」も体感しました。考え方も働き方も皆異なり、朝ゆっくり出社して夜遅くまで研究に取り組む人もいれば、家庭の事情に合わせて働く人もいます。一人ひとりが自分のスタイルで研究に打ち込む姿を見て学べたことも研修の成果となりました。

  • 新入社員研修
    ビジネスマナーや自社知識の研修に加え、研究遂行のための基礎知識とスキルを身に付ける研修を半年から1年をかけて行います。実施状況を考慮し、研修プログラムを毎年アップデートをしています。
  • 基礎技術研修と研究OJT
    多様な分野の研究員との議論やコラボレーションを重視し、自身の専門分野にとどまらず幅広い知識を身に付けることを目指した基礎技術研修を行っています。画像処理、センサ技術、暗号・情報セキュリティ、機械学習、プログラミング、知的財産など多岐にわたる分野を、現役研究員から直接レクチャーを受けて課題に取り組みます。応用研修として、研究業務の遂行スキルや研究に対する姿勢、心構えを身に付けるため、OJTでの研究活動に参加し、メンターの指導のもとで実際に研究を行います。
  • 新入社員報告会と配属
    研修の仕上げとして、幹部社員に向けて研修を終えての報告会を実施します。幹部社員は、学生時代の専門分野、個人適性、本人希望を総合的に判断した上で、本人がパフォーマンスを最大限発揮できるよう配属を決定します。

研究テーマも自律的に決める裁量の大きさ

高橋文彦・髙山献

――現在はどのような研究に従事していますか?

高橋:入社以来、防犯カメラの画像から特定の行動をする対象者を自動で見つける技術を研究し続けています。最近はCGも用いてさらなる効率化に挑戦しています。

以前はトップダウンでテーマを与えられることもありましたが、現在は未来のビジョンを踏まえつつ、皆で意見交換しながらテーマを考えているので、自分がやりたい研究にさらに取り組みやすくなりました。

髙山:セコムが保有する警備機器やソフトウェアの、安全な管理方法を研究しています。これはセコムだけで完結する課題ではなく、多面的な取り組みが必要です。そのため、IETFという国際標準化団体で「どのような要件を満たし、どういう方式で通信を行えば安全性を確保できるか」を世界中の研究者と議論し、合意部分を標準ドキュメントにまとめていく作業も行っています。

私の場合は、新人研修中や配属後にセコムの研究者の研究内容を理解した上で、セコムにこれから必要になる技術や自分の専門・興味を総合的に考え、研究テーマを提案しました。他の研究所で働く友人の話では、ボトムアップでのテーマ提案が難しいケースもあるので、自発的・自律的に研究者自らがテーマを提案できるセコムとの違いを感じます。

  • 自発的な研究提案の場 ~テーマ化検討会~
    IS研究所の所員は、誰でも研究テーマを提案できます。「テーマ化検討会」は、所員が新たに取り組むべきと考える研究テーマを提案し、承認を得る場です。直属の上司のほか、研究所長をはじめとする研究所幹部が出席します。単にテーマの是非が判断されるだけなく、より良い研究とするためのアドバイスが多く得られる機会となります。何度でもチャレンジでき、研究員の自発的な取り組みが数多く研究テーマになっています。

――それぞれの研究はどのように進めていますか?

高橋:最先端論文のリサーチとその検証と、それを元に発想した新しいアルゴリズムの構築など、デスクワークが中心です。私が所属するグループでは週1回のミーティングで進捗報告を行います。その際「この研究はもっとこの部分に力を入れてみては」といった意見をもらい、客観性を保ちながら研究を進められます。

実証実験などの領域横断プロジェクトでは、他部署との連携も必要です。精度と同時にスピードも重視する風土のため、力を合わせて一気にドン、と進める力を感じますね。

髙山:研究の進め方は部署と人によって異なります。私の場合は、主に一人で黙々とプログラムを書いて繰り返し検証しています。また、IETFの標準化活動では社外・海外の人と連携を図り議論するという、真逆の性質の2つの作業を両立しています。

テーマによっては、複数の研究者や部署間で連携して進めることもあります。IS研究所は異なる専門分野の研究者が1カ所に集まっているので、普段からお互いの顔や研究内容が分かり、協働しやすい環境です。

――これまでの研究で印象に残っていることは何ですか?

高橋:若手の頃、研究所で開発案件を担当し、期限に間に合わせるために遅くまで残って夢中で作業をしたのは良い経験です。そのとき作った「ウォークスルー顔認証システム」が、実際に世の中で使われたときは大きな達成感がありました。

髙山:研修中、新人6人で一つのプログラムを作りました。経験値も専門も異なる者同士が、スキルやアイデアを出し合って一つのものを完成させるのは、初めての経験でした。絶対的に正しい一人の力ではなく、良いものを作るために意見を出し合い、協力できる仲間の存在価値を肌で感じました。

高橋:若手研究者は特に同期と仲が良いですね。研修プログラムを通じて、横のつながりが強化されていると感じます。

医療や介護、災害対策も手がけるテック企業

高橋文彦・髙山献

――IS研究所の研究環境にはどんな魅力があるでしょうか。

髙山:「自律」が体現された研究環境だと思います。自分の研究テーマを提案したときに「セコムの中で足りない部分はここかな」と探したように、誰かから与えられた研究ではなく、自律的な研究で貢献できるのは大きな魅力です。最近はテレワークが中心になってコミュニケーションのあり方が変わり、自律的な行動の価値はいっそう高まっていると思います。

高橋:ワーク・ライフ・バランスの良さも特徴的で、私を含め育児休業を取得した男性研究員が何人もいます。有給休暇も取りやすく、朝に子どもを送ってから出社することも当たり前にできる職場です。

――IS研究所で働くメリットや、おすすめのポイントを教えてください。

髙山警備のイメージが強いセコムですが、医療、介護、災害対策などの分野にも貢献するテック企業です。例えば、警備システムを作るだけでなく、途切れない警備や災害対策としてのビジネス・コンティニュイティ・プランにも対応し、常に動き続ける信頼性の高いシステムの研究が求められます。このように、研究者が貢献できる広い分野を持っていることがIS研究所の面白さです。

高橋:事業領域の広さの分だけ幅広い研究と多様な研究員が存在しています。しかも、それらの研究者が一つの建物に集結しているので、コミュニケーションも取りやすく、知的好奇心を刺激されることも多いです。メインの研究テーマを進めつつ、気分転換のように裏テーマを研究する人もいますね。それらもメインのテーマに活きるはずなので、自由にできる文化があります。

髙山:外部の大学の先生や他企業の研究者とのコネクションがあり、意見交換や共同研究ができるので、研究を進めやすいのも良い点ですね。

  • IS研究所の6ディビジョン(部門)
    IS研究所は未来のセコムのサービスに寄与するため、6つのディビジョンがあります。詳細は組織紹介をご覧ください。

恵まれた安定感が研究環境の土台に

高橋文彦・髙山献

――セコムの研究者として働くやりがいを教えてください。

高橋:セコムの事業の中核であるセキュリティは、景気に左右されないニーズのある分野です。会社としての高い安定感の中で研究ができ、何かを作り出し、新しいものに最初に触れるワクワク感は大きなやりがいです。私は東北出身なので、東日本大震災の折には災害対策にアプローチできる会社で働く意義も感じました。

髙山共同研究のオファーをもらうなど、自分の研究の内容や将来性が外部から評価されたときには特にやりがいを感じます。

IETFの標準化団体には、現在セコムから4人の研究者が参加しています。そこに当社の立ち位置が築かれているのは、先輩たちの貢献があってこそだと実感しています。同じ分野に興味を持つ人が今も昔もIS研究所に集まり、恵まれた環境で優れた研究者と協働できるのは、セコムで研究する喜びですね。

――最後に、理系就活生にメッセージをお願いします。

高橋熱意を持って取り組み、その思いを発信することが大切です。いま取り組んでいることを自分のやりたいこと・好きなことにつなげるイメージを持てば、モチベーションになり、知識の吸収や理解度も上がります。やりたいことや好きなことをアピールすると、周りの協力も得られるはずです。

髙山:「チャンスがあったらまずやってみる」と意識してほしいです。私は学生時代にベンチャー企業でアルバイトをしたことが非常に良い経験となり、今の仕事でも新しいプロジェクトに参加するたび新しい発見があります。新たな知識や経験のために、インターンシップなどの機会をぜひ活かしてみてください。

(2022年12月)