中津川 広樹

EM-Waveインフォマティクスグループ

— 大学時代はどんな研究をしていましたか?

私は電気系工学専攻で、量子半導体エレクトロニクスの研究室に所属していました。当時の研究は、エレクトロマイグレーション(金属配線中に電流が流れることにより構成原子が流動する現象)がナノメートルスケールの細い金属線においてどのような条件で起こるのかを調べるというものです。最終的に、既知のものとは異なるメカニズムで、エレクトロマイグレーションが進行している領域を発見しました。その領域では各金属固有のポテンシャルに対応した電圧が最低限必要であることが示唆されており、この電圧値を目安にすれば、集積回路の故障の抑制に繋げられたり、効率よく分子接合デバイスを作製できたり、といったことが期待できるとわかりました。

とても興味深い研究でしたが、当時は自分が将来なんの仕事をしたいのか決まらず悩んでいました。就活中、自分は特定の技術課題ではなく、財産や生命を脅かすさまざまなリスクという社会課題の解決に関わりたいことに気付き、社会の安全安心を守ることに貢献している企業の中からセコムを選びました。

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— 就職後の経歴を教えてください

入社1年目は、IS研究所で研究員として求められる知識やスキルを学ぶ研修を受けました。特に、いくつかの研究グループの研究を経験する研修では、技術の幅や研究分野毎の多様性を実感できました。基礎技術の研修では、プログラミングや機械学習、画像処理、センサー、暗号技術など幅広く密度の濃い知識が得られました。私はプログラミングの経験が少なかったので、スキルアップの良い機会だったと思います。IS研究所だけではなく、警備の現場での研修もあり、サービスの最前線を意識して研究を進める必要性も実感しました。

今は、EM-Waveインフォマティクスグループに所属しています。このグループは、レーダーやLiDAR、携帯電話などさまざまな電磁波を利用したセンシングの研究をしています。配属してすぐに、電波やレーダーの基礎知識を学び、次に自身の研究テーマを立ち上げました。先行研究の調査や課題解決のためのアプローチの検討、ディスカッションなどテーマが決定するまで時間がかかりましたが、しっかりと準備をした上で本格的な研究に取り掛かることができました。


— 今はどんな研究をしていますか?

今は、レーダーから発射された電波が壁などで反射した際に発生する虚像(実際には存在しない物体の像)の対策を研究しています。セキュリティや高齢者の見守りをする上で、どこに人や物があるかを正しく認識することが重要です。しかし、虚像はこの認識の妨げになるため、それを防ぐことを目的としています。

レーダーで得られるデータはまばらなため、カメラの画像のような豊富な情報を扱う研究とは違った難しさがあります。しかし、限られた情報の中で必要な情報をいかに抽出するのかが、チャレンジングで面白いところだと思っています。自分で考案した手法がどれだけ理論通りに上手く行くのか、あるいは上手く行かなかった場合にはどう対応するべきなのかを楽しみにして研究を進めています。

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—普段の仕事や生活はどんな様子ですか?

学生時代に生活リズムを崩してしまったので、健康を意識して朝9時までに出社するようにしています。研修中は、主にメンターや同期の仲間との相談、コーディングや技術調査、資料作成などを行っていました。仲間と社員食堂や近所の飲食店で昼食をとるのも毎日の楽しみの一つです。忙しい時期には夜まで仕事をすることもありましたが、自分の成長も感じられてエキサイティングな経験でした。

テレワークの日は朝9時頃に起き、お昼に弁当を買って、夜19時頃まで研究をしていることが多いです。定期的にグループでリモートミーティングをしていて、グループメンバーからアドバイスをいただくこともあります。IS研究所のオフィスはとても働きやすい環境なので、家でも出社時のような集中しやすい環境に近づけるため、スーツに着替えて気持ちを切り替えたり、部屋の照明を明るいものに替えたりと工夫をしています。また電波や電気回路を扱う研究の役に立つと思い、第一級陸上無線技術士の資格を取得しました。いまは電気工事士の資格取得に向け勉強中です。