安心・セキュリティ・サービスを科学的に明らかにする

「セコムが提供しているそのもの」とは?

セコムは、「信頼される安心を、社会へ。」のコーポレートメッセージのもと、「あんしんプラットフォーム構想」を掲げて、人々に「あんしん」を提供しようとしています。
「セコムの商品」の一番大きなもの、対価を頂戴して提供している「そのもの」は、「あんしん」という無形のものです。人々は、これを「“安心”という言葉」で表し、あたかも「ある」かのように扱っています。しかし、「あんしん」は形をもたないものであり、物理的に「ある」わけではありません。


「セコムの商品」の研究はなぜ難しいのか

会社の研究部門は、例外なく「自社の商品」を研究対象として研究を行っています。しかし、セコムが「自社の商品」として世の中に提供している「あんしん」、「セキュリティ」、「サービス」などを、研究対象としようとしても、これらは、形をもたない非物理的なもの、概念としての存在であることから、いわゆる「通常の科学や工学の方法論」では、これら「そのもの」の正体を明らかにすることには困難が伴います。この理由により、これらに関しては、その本質を科学的に、総論的観点から追究する研究は多くはなされてはおらず、各論的に、対象分野を限定して検討を行う研究が主流となっています。


本研究の目的、そしてその手法

本研究では、この現状を打破するために、セコムが世の中に提供している「あんしん」、「セキュリティ」、「サービス」など、物理的な実体をもたない存在「そのもの」の正体を、科学的に、総論的に明らかにしようとしています。
このような、物理的な実体をもたない存在「そのもの」の正体を追うためには、「通常の科学や工学の方法論」は通用しません。そのため、本研究では「現象学」という哲学分野の考え方にまで遡り、それを基盤とした「科学」の方法論でその正体を追究しています。


通常の「科学の考え方」

私たちは「自分の外側に世界が広がっていて、そこにいる自分は視覚や聴覚などの知覚によってその世界を認識している」と考えています。この考え方は「二元論」と呼ばれ、近現代の科学を大きく進歩させてきました。「実体をもつ存在」に関わる認識は人によって大きくは異なりません。ある一人の認識、理解をもとにして論を展開しても一般性は失われないということです。今の科学、そして工学は、基本的にこの考え方を前提になりたっています。


本研究で採る「現象学」という考え方

一方、概念や感覚、価値などの「実体をもたない存在」が認識対象の場合、その認識は「人それぞれ」になるのが普通です。この「人それぞれ」が「通常の科学や工学の方法論」の適用を難しくしている大きな理由です。
このような「実体を持たない対象の認識」を考える哲学が「現象学」です。現象学では、「“主観(としての意識)がそれを感じている”ということが原因となって、私たちの意識に,外の世界に“それがある”という確信を抱かせる結果をもたらしている」と、「原因と結果を逆転させる」形で「認識」を理解します。「人の意識にもたらされた“感じ”を主,外の世界を従」とする認識論です。簡単に言うと「人間の主観的な認識(感じ)はどのように作られるのだろうか?」を考えるということです。なお、現象学の「現象」とは、私たちが物事を認識する主体である意識への「立ち現れ(意識にもたらされた“感じ”)」であって、一般によく使われるこの言葉の別の意味、「物理的な出来事」のことではありません。

本研究では、この現象学をベースとする科学の考え方を基盤に、「あんしん」、「セキュリティ」、「サービス」など、セコムが世の中に提供している「そのもの」の本質を明らかにしようとしています。


本研究の位置付け、そしてその目指すところ

一般に、「セコムが世に提供しているもの」だと思われている機器類、例えばセンサーやシステムなどは、「あんしん」、「セキュリティ」、「サービス」などの「セコムの商品」の生産手段、メーカーで言えば「工場」にあたります。センサーやシステムなどを対象とした技術研究は、「生産技術」の研究に相当します。IS研究所では、車の両輪として、「商品」そのものと、その「生産技術」の研究を並行して行っているということです。

これまで、取り組まれてこなかった、「あんしんとは何か」、「セキュリティとは何か」、「サービスとは何か」などの本質を、総論的観点から明らかにすること。そして、これによって、IS研究所で行われている様々な技術研究が、より高みを目指すことが出来るようにする指針を示し、結果として、セコムが世に提供している「そのもの」のレベルをより高めることに寄与する。これが、本研究がゴールとして目指すところです。


参考文献・関連特許