監視カメラ(以下カメラ)は、商業施設や駅の構内、街中などいたるところに設置されています。その目的は犯罪や事故、けんかなどのインシデントの予兆をとらえて未然防止したり、インシデントの有無を確認してその場の状況を把握したりすることです。したがってカメラは、インシデント発生時には何が起きたのか、いま何が起きているのかなどの状況を確実に捉えられるように配置される必要があります。
監視カメラの配置は、従来の方法ではセキュリティプランナー(以下プランナー)が決定します。プランナーは、現地調査や建物の平面図を元に、カメラやその他のセキュリティ機器の配置を計画します。そして現地で実際のカメラ画像を見て、その場の状況を捉えられているかを確認し、最終的な設置位置を決定します。しかし、想定されたすべての状況を抜けがなく捉えているか、人の目で確認する作業は大変です。本テーマでは、こうした手間のかかる確認作業を、確実に効率よく行う仕組みの実現を目指しています。
建物の平面図など2次元の図面だけでは、カメラを設置した際にどのような画像が得られるか正確にわかりません。そこで本テーマでは「空間情報」を活用します。空間情報とは、現実世界の地形や建物の位置、形状、設計情報、各種属性情報、センサーやカメラ、SNSなどから得られたリアルタイム情報を含んだデジタルデータの総称です。
空間情報には、建物の3Dモデルも含まれており、カメラを建物の壁などに配置した際に、どのような画像が写るかシミュレーションできます。また遮蔽物の有無や、人物や物体がどの程度の解像度で写るかなどを確認できるほか、天井の構造や形状、建材の情報からその位置にカメラを設置できるかも判定できます。これらの情報をもとにカメラ配置の評価関数を構成でき、この評価関数の数理最適化問題を解くことで最適なカメラ配置を求められます。
下図は、空港の保安検査場のカメラ画像のシミュレーションです。検査を受ける人の顔や行動、手荷物検査の様子や待機列の様子がどう写るかを確認できます。数理最適化問題を解く方法はいくつか考えられます。例えば、カメラの位置や角度を連続値として扱い、多点探索アルゴリズムで準最適解を探索する方法、あるいは解空間をあらかじめ離散化して組合せ最適化問題として解く方法が考えられます。
下図はコンビニエンスストアの店内を、死角なく監視するカメラ配置の例です。棚の陰など店員の死角になる箇所も撮影できるように、必要最小限の数のカメラが配置されています。
セコムには、長年セキュリティシステムを提供しながら培ってきたカメラプランニングのノウハウがあります。このノウハウを利用することで、状況を把握するためにはどう写すべきかという知識を評価関数のロジックに組み込んだり、お客様の要望に応じて対話的にカメラ配置を修正していく機能を持たせたり、より実用的な探索システムを構築することを目指しています。