高齢者の服薬支援

服薬に関する困りごと

高齢者の中には、自宅で慢性疾患のための服薬治療を行っている方が多くいます。そうした方々は、服薬に関してさまざまな困りごとを抱えています。例えば、「飲んでいる薬の副作用が心配」、「いつ薬を飲めばいいのかが分からない」などです。その中でも多いと思われる困りごとが、薬を飲み忘れてしまうことです。一説によると、後期高齢者が1年間に飲み忘れて破棄してしまう薬は、日本国内で500億円分もあると言われています。医療費が無駄になることも問題ですが、薬の服用で維持・向上されるはずの健康が損なわれてしまうことが一番の問題です。そこでセコムでは、安心して効果的な服薬治療を実施できるように、「服薬支援システム」を構築しました。


服薬支援システムの実証実験

服薬支援システムは、服薬カレンダー型のIoTデバイス(以下服薬カレンダー)とコミュニケーションロボット(以下ロボット)から構成されます。
服薬カレンダーとは、その日飲む分の薬を日付ごとに収納したカレンダーです。IoTデバイスにしたことで、いつどの薬を取り出したかを検知して、サーバーにデータを送信できます。
この服薬カレンダーとロボットを連携させると、ユーザーの行動に応じた支援を行えます。例えば、予定されている時間帯に決められた薬が取り出された場合、ロボットは服薬が継続できるように奨励するメッセージ(例:「お薬を取ってくれて良かったです。忘れないように早めに飲んでくださいね。」)を話します。また、違う薬を取り出した場合や、所定の時間まで薬が取り出されない場合には、注意喚起のメッセージを話します。

服薬支援システム
服薬支援システム

この服薬支援システムを数名のユーザーに対して実証実験を行いました。その結果、認知症がない、もしくは軽度の認知症の方は、導入前よりも薬の飲み忘れの頻度が減少する傾向を確認しました。実験に参加した90代の男性の場合、1日4回の服薬に対する飲み忘れは、実験参加の前々月は1回、前月は5回でした。一方、実験期間中の3カ月間の飲み忘れは1回だけでした。特に注目すべきことは、所定時間を過ぎても薬が取り出されず、ロボットの服薬誘導のメッセージの後2分以内に取り出された事例が18回あったことです。この結果から、いくつかのメッセージが飲み忘れ防止に寄与したと考えられます。
今後は、血圧計や活動量計などのバイタルデータも活用し、より安全で効果的な服薬支援システムの構築を目指します。


関連特許

  • 特許7299033,「服薬支援システム、スケジュール設定装置、服薬支援方法及びプログラム」