日本国内の情報通信機器の保有率は高く、携帯電話などのモバイル端末の保有率は96%を超えています※。携帯電話は利便性をもたらした一方で、入試におけるカンニング行為など、悪用されるケースもあります。携帯電話の悪用の防止策には確実性やコスト、利便性などのトレードオフが存在します。たとえば、簡易的なゲートや人の目で確認する方法では、巧妙に隠された携帯電話を見逃す可能性があります。X線探査装置や金属探知ゲートで携帯電話を検知したり、妨害電波で強制的に携帯電話を使えなくしたりなどの確実性の高い方法ではコストが高くなったり、正規の携帯電話も妨害したり、利便性が低くなります。
※ 総務省 令和2年版 情報通信白書「情報通信機器の保有状況」より
本テーマの目的は、監視領域内のどこに人がいて、その人物が携帯電話を使用しているかどうか、携帯電話を使用していい条件かどうかを自動的に把握する仕組みの実現です。この仕組みでは、携帯電話を使用している人の位置情報とその人物の属性情報を利用します。使用者の属性とは、その人物が従業員か来客か、または携帯電話を所持して良い権限があるかなどを意味します。これらの情報から、権限のない人物が携帯電話を所持していることを検知します。
監視領域の建物の構造情報を利用することで、どの位置から電波が送信されると、どのように電波が回折したり、反射したりするかを予測できます(電波伝搬予測)。パッシブ型レーダーで受信した携帯電話から発信された電波の情報と電波伝搬予測の情報、そして複数のカメラから推定される人の位置情報を比較して、携帯電話を使用している人物の位置を特定します。この技術は、携帯電話の使用者を特定するだけでなく、紛失した携帯電話の捜索やタグ付き商品の持ち出し検知などへの活用も考えられます。