ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 下手な鉄砲も数打ちゃ当たる?〜犯罪者側から見た特殊詐欺〜
電話などの通信手段を用いて遠隔から言葉巧みにお金をだまし取る「特殊詐欺」が増えています。警察を含め社会全体でこの特殊詐欺に対抗しようとしていますが、残念ながらその数はなかなか減っていないというのが現状です。今回は、ちょっとした計算をおりまぜながら、この特殊詐欺がなぜ減りにくいのかについて考えてみたいと思います。
・3割バッターは75%ヒットを打つ?
野球における打者の評価尺度の一つに「打率」があります。計算を単純化するため四死球などはないとして「3割バッター」を10回打席に立ったうち3回はヒットを打てるバッターと仮定します。このバッターは、10回のうち7回はアウトになるわけですから、この打者の「アウト率」は7/10ということになります。
この打者が1試合で4回、打席に立ったとすると、打席1回あたりのアウト率が7/10ですから、4回ともにアウトになる確率は、これを4回掛け合わせて0.24、24%ということになります。したがって、この打者が1試合に1回でもヒットを打つ確率は、100%からこの24%を引いた値、76%となります。すなわち、3割バッターとは、1試合のうち3/4以上の確率でヒットを打てるバッターだったということです。
・打席に立つ回数が増えるとどうなるか
当然のことながら、この打者は、打席に立つ回数が増えれば、増えるほど、ヒットを打てる確率は高くなります。実際に計算すると、5回ならば83%、6回ならば88%と、実に9割近い確率となることが分かります。
さてここで、ヒットを打つ率が1%、アウトになる率が99%の打者という少し極端な例を考えてみましょう。仮にこの打者が、500回打席に立ったとして500回が500回ともアウトになる確率を計算してみると、その確率は約0.007、たったの0.7%にしかなりません。失敗率が0.7%ですから、「100回のうち99回はアウトとなる」非常に「ヘボなバッター」であっても、500回打席に立つことができる場合、そのうち1回でもヒットを打てる確率は99.3%、100%に近い値となるのです。「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」という言い回しは、まさにその通りであると言えるでしょう。
・犯罪者側から見た特殊詐欺
特殊詐欺は、電話などの通信手段を使い犯罪を仕掛けてきます。犯罪者にとってはこの段階で捕まるリスクは非常に低く、時間と気力さえ続けば、何回でも仕掛けることが可能です。仮に、一人の人が騙される確率が1%と低く、99%は失敗してしまうとしても、この「試み」を500回繰り返すことができれば、100%に近い確率で「騙し」が成功してしまうのは、「ヘボなバッター」が打席に立つ場合と同じです。
過去の「データから読む」にもあるように、特殊詐欺の1件あたりの被害は500万円に迫っており、非常に高額になっています。たとえ「1回の電話あたりの犯罪成功率」が非常に低かったとしても、数を重ねることでほぼ成功することができるとすれば、そして犯罪に成功した場合の「収穫」がまとまった金額になるとすれば・・・。特殊詐欺がなかなか減らない理由です。
「トライの繰り返し」は、先のコラムで紹介した「倍倍倍の怖さ」の場合と同じく「かけ算」で効き、犯罪者に犯罪利得をもたらします。特殊詐欺を減らすためには、なによりも、この「トライを繰り返す」攻撃をやりにくくすることが重要です。「電話を録音する」などの対策が効果的な理由はここにあるのです。
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