ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 鈍化してきた犯罪の減少 〜都道府県別にみた犯罪の増減〜
前回、この10年での犯罪の増減について書いてみました。基本的に減少傾向となっていますが、最近になって増加に転じているものも出てきました。また、増加までは至っていないものの、減少のスピードにブレーキがかかってきているものもあります。
前回は、全国の犯罪統計をみてみましたが、今回は、都道府県別にみた場合について考えてみようと思います。犯罪の種類によっては、件数がとても小さくなるものもあります。そこで今回は、いくつかの犯罪の合算値を示すものについてみてみます。前回同様、各年1〜10月の認知件数を用いています。
主要犯罪の件数変化をみるための一考察
犯罪の増減をみる方法として、この10年の件数推移の年平均変化量と、最近4年間の件数推移の年平均変化量を比較しました。もう少し正しく言うと、犯罪件数のグラフの一次近似直線の傾きを比較しています。
中学生で習った一次関数のグラフの傾きを思い出してください。y=ax+bのaが傾きを表す部分でした。このaの値が小さければ緩やかな傾きに、大きければ急な傾きになります。また、aの値がプラスであれば右上に伸びる"増加"、マイナスであれば右下に伸びる"減少"となります。
これらを踏まえて右の図をみてください。赤い線のような犯罪件数の推移があったとします。この曲線を直線で近似した時に、傾きマイナス3000の黒い点線の直線となります。傾きがマイナスということは、犯罪が減少傾向にあることを示します。
また、最近4年間だけに注目すると、犯罪の減少度合いが鈍化して、緩やかな勾配に変化していることがわかります。この部分だけを直線で近似すると、傾きマイナス600の青い点線の直線となります。どのくらい変化したのかを数値化するために、この両者の比を計算します。
(マイナス600)÷(マイナス3000)=0.2倍
となります。例えば、最近4年の傾きがマイナス300などと、もっと緩やかな勾配になったとすると、この倍率はさらに小さくなります。これを踏まえて、各犯罪についてみてみましょう。
傾向が変化してきたのはどのあたり?
先にいくつかの合算値と書きましたが、刑法犯、重要窃盗犯、重要犯罪の3つについてみました。刑法犯は、犯罪全体を示します。また、重要窃盗犯は、侵入盗、自動車盗、ひったくり、すりの合計です。さらに、重要犯罪は、殺人、強盗、放火、強姦、略取誘拐・人身売買、強制わいせつの合計で表されます。
まず刑法犯では、倍率が最も小さくなったのは島根県です。次いで、大阪府、香川県、富山県、石川県と続きます。次に重要窃盗犯をみると、倍率が最も小さくなったのは徳島県でした。次いで、石川県、富山県、高知県、山梨県と続きます。最後に、重要犯罪についてみてみます。倍率が最も小さくなったのは、愛媛県です。次いで、香川県、奈良県、石川県、山形県と続きます。ただし、香川県は、この10年のバラツキが大きく、除外した方が良さそうです。
この重要犯罪では、この4年間での傾向として増加基調となっているところは多く、47都道府県中、3分の1ほどあります。
犯罪の減少を継続するには
都道府県別の犯罪件数の数値だけを用いて、最近の傾向についてみてみました。もう少し詳しくみる必要はありますが、主要犯罪の動向をみると、西日本と北陸の一部地域で、減少傾向の鈍化、あるいは増加の傾向がみられます。
さらに、凶悪犯罪を含む重要犯罪については、増加に転じている地域が多くなってきていることが気になります。重要犯罪は、治安のバロメーターとも言われます。これらの件数が、本格的な増加傾向に突入しないためにも、皆さんの日頃からの防犯活動を一層進めていただきたいと思います。
セコムIS研究所
リスクマネジメントグループ
濱田宏彰
犯罪件数の推移のサンプル図
(実在しない架空の犯罪件数の
推移と、期間別の一次近似直線)
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