防災・防火 2020年08月19日

第313回 もしもひとり暮らしの女性が水災の被害にあったら?避難時の対応まとめ

頻発する大雨による水災は、私たちにとって地震と同様にしっかりと備えておくべき自然災害になりつつあります。前回は、ひとり暮らしの女性が水災リスクに備えて準備しておきたいことを紹介しました。今回は、水災が発生したときの対応をまとめます。
いざというとき慌てないよう、防災女子の心得として知識を持っておきましょう。

2020.8.19更新

頻発する大雨による水災は、私たちにとって地震と同様にしっかりと備えておくべき自然災害になりつつあります。前回は、ひとり暮らしの女性が水災リスクに備えて準備しておきたいことを紹介しました。今回は、水災が発生したときの対応をまとめます。
いざというとき慌てないよう、防災女子の心得として知識を持っておきましょう。

<プロフィール>
プロフィール

井上 雅子
セコム株式会社 IS研究所
サービスエンジニアリングディビジョン
空間エンジニアリンググループ
研究員

専門である建築の3Dモデル解析を活用して、空間の安全性や快適性を向上する研究を行っている。避難安全検証などの実務を生かし、防災リスク検討の逃げ地図ワークショップ(逃げ地図マニュアル[地域版] )等、幅広く防災活動に取り組む。

避難する?しない?大雨・台風予報のときの対応

Q
最近はスマホアプリなどで大雨や台風などの防災速報をタイムリーに受け取れるようになりました。自分が住んでいる地域で大雨の予測が出ている場合、どのような対応が求められますか。
A
降雨情報や近隣の河川の水位情報をチェックすることが重要です。
テレビや災害情報のWEBサービスなどを利用して、リアルタイムで刻々と変わる情報をチェックしておきましょう。自治体によっては、河川水位情報や河川カメラ映像を公開しています。
また、住んでいる地域で災害が発生していたら、どこまで危険が迫っているのかを判断することが大切です。安全を確保することを念頭に、早め早めに準備を進めましょう。普段から、避難先に持っていくものも確認しておいてくださいね。
画像
Q
自宅から避難するかどうかのポイントを教えてください。
A
住んでいる場所によって判断が異なります。ハザードマップを見てみましょう。
ご自宅周辺にどのような危険が起きやすいかがわかります。
大雨のときは、外水氾濫や内水氾濫、土砂崩れなどのリスクが高まります。川のそばや低地に住んでいる方は、早めに避難を決断したほうがいいでしょう。
災害が迫り、安全を確保できない時の避難は危険です。

水災時に避難する場合の注意点

Q
避難のときに気を付けることはありますか。
A
暗くなってからの避難はやめましょう。 明るいうちでも、冠水した道路を歩くのは危険です。 たまった水にも流れがあるので足を取られますし、マンホールや側溝のふたが外れていて転落することも考えられます。
日が落ちて足元が見えなくなってからの避難は、どこが道かも分からなくなるので危険度が増します。避難経路が冠水している場合は、建物の上階へ避難する、垂直避難も考えましょう。

また、サンダル履きにハーフパンツのような軽装での避難は危険です。
ガラスの破片などいろいろなものが水に混じって流れてくるので、けがをする恐れがあります。
長靴も、水が入ると足を取られて歩けなくなりますので、水災時の避難には不適切です。
冠水時に足元が水につかるのは避けられないこと。歩きなれたスニーカーに、足を守れる長ズボンなどのほうが、安全です。替えの靴や服を準備して、避難しましょう。
Q
道路が冠水した場合の注意点を教えてください。
A
地震は揺れが収まって、周囲の状況を確認してから避難するのが鉄則ですが、水災の場合は、災害が起きてからでは安全に避難できない可能性が高いです。
水深にして、男性なら60cm、女性なら50cm、子どもや高齢者の場合は20cmを超えると、避難行動そのものができなくなると言われています。
また、水深30cm程度でも車のエンジンに水が入ってしまうので、車での避難もできなくなります。
命を守るためにも、水が膝より上まで来ているようなら、水が引くまで避難はあきらめ、自宅のなるべく安全な場所で過ごしたほうがいいでしょう。
安全を確保することを念頭に、避難する場合には、「災害が起きる前に」「明るい時間帯に」行動を起こしてください。

避難所へ行くとき女性が携帯しておきたいもの

Q
避難所での暮らしがあまり想像できない女性も多いと思うのですが、どんなものを持っていけばいいのでしょうか。
A
非常用持ち出し袋のチェックリストを参考にすればいいと思います。
女性の場合は、生理用品や防犯ブザーなども必要ですね。
また、避難所は人が集まる場所なので、新型コロナウイルスの感染リスクにも備えなくてはなりません。避難所への集中を避ける分散避難も行いましょう。
マスク・アルコール消毒剤・体温計は自分で準備していきましょう。
これらはどの自治体でも備蓄が不足しているので、避難所では確保できない可能性があります。
マスクやアルコール消毒剤が十分に準備できなければ、口と鼻を覆えるサイズのタオルや手ぬぐい、ウエットティッシュを多めに持っていきましょう。
感染症対策で言えば、コップやタオルの共有も避けなくてはなりません。
感染を防ぐためにも、「人から借りる・もらう」のではなく「自分のものは自分で用意する」つもりで持ち物を準備しておくことが大事です。
Q
避難所で気を付けるポイントを教えてください。
A
口腔(こうくう)衛生は、避難所で体調を壊す原因になることが多いです。
歯みがきが十分にできないために、口腔内の雑菌による感染症を引き起こすことがあります。水が使えない可能性もあるので、歯ブラシや歯みがき粉だけではなく、マウスウォッシュや歯みがきガムなども用意しておきましょう。
口腔ケア以外では、除菌ウエットティッシュや水のいらないシャンプー、使い捨てられる下着など、清潔に保つためのアイテムもあったほうがいいですね。
大勢の人が寝泊まりする避難所では、衛生的な問題による二次被害が珍しくありません。
衛生面は自己防衛が必要だと心得ましょう。
Q
女性は避難所のトイレを利用しにくいとも聞きました。
A
最近は女性に配慮してエリアを分けている避難所も増えてきましたが、やはり抵抗がありますよね。実際、トイレをがまんして体調を崩す女性は多いです。
ひとり暮らしの女性の場合はなおのこと、避難所で生活する不安が大きいと思います。被災していない地域に住む家族や知人の家に身を寄せたほうが、ストレスが少ないはずです。
「もしものことがあったら、お願いね」と伝えておくなどして、避難所以外の避難先を確保しておきたいですね。

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住居がある場所に危険がなく(浸水や土砂崩れ、高潮などのリスクが低い)、鉄筋コンクリート造など頑丈な建物で、2階以上に住んでいる場合は、自宅にとどまる「在宅避難」という考えもあります。
いろいろな可能性を考えて備えておくことができる防災女子を目指したいですね!
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