開催レポート
番外編:「ルフィと会話できる!?集英社の玄関受付でルフィが来客対応中!!【AIルフィ実証実験レポート(集英社オンライン)】」

セコムの「バーチャル警備システム」を活用した新しい取り組みとして、株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)と協働して、株式会社集英社と東映アニメーション株式会社の協力の下、人気漫画・アニメ『ONE PIECE』の主人公ルフィが「AIルフィ」として受付業務を行う実証実験を2022年3月24日(木)から4月15日(金)まで集英社のオフィスにて実施しました。

今回、集英社の総合ウェブメディア「集英社オンライン」の4月9日(土)付の記事「ルフィと会話できる!? 集英社の玄関受付でルフィが来客対応中!! 【AIルフィ実証実験レポート】」で本取り組みを紹介いただきました。
集英社オンラインよりご許可をいただき、こちらに転載いたします。

また、集英社の漫画アプリ・ウェブサイト「少年ジャンプ+」では、漫画家のサクライタケシさんによるルポ漫画「すすめ!ジャンプへっぽこ探検隊!」の第65話「サクライ神保町でルフィに会う!」として漫画化いただいています。本レポートとあわせて、ぜひご覧ください。

AIルフィを囲む関係者

左からDeNAの中井雄一郎様、吉田航太朗様、セコムオープンイノベーション推進担当リーダーの沙魚川久史、漫画家のサクライタケシ様、
集英社の森通治様、少年ジャンプ+のU田編集様


「すすめ!ジャンプへっぽこ探検隊!」第65話中の一コマ

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転載記事:集英社オンライン

ルフィと会話できる!? 集英社の玄関受付でルフィが来客対応中!!【AIルフィ実証実験レポート】

尾田栄一郎
ONE PIECE公式
週刊少年ジャンプ
藤下元気(オムカレー)
集英社オンライン編集部


AIルフィ本体の横には、原作イラストの看板。ていねいな敬礼ポーズだ。(撮影:藤下元気)

四皇との激闘も記憶にあたらしい、未来の〝海賊王〟モンキー・D・ルフィ。その彼が新世界を飛び出し……集英社ビルで会社案内をしている!? にわかには信じがたい内容が、2022年3月24日のプレスリリースで明かされた。

『ONE PIECE』のルフィが「AIルフィ」となって受付業務をおこなう実証実験を開始

リリースを出したのは集英社ではなくセコム株式会社。あの警備会社の、だ。
さらに株式会社ディー・エヌ・エーとも、東映アニメーション株式会社とも組んでいる実験???
聞いただけではよくわからず、ルフィでなくとも「ふーん。不思議実験か」と、聞き流してしまいそうというのが正直なところだ。

そんな折、関係者へ向けた【AIルフィ】の説明会が開かれるという情報を得た。
こんなおもしろそうなものを、わからないままにしておくのももったいない。
さっそく集英社オンライン編集部と筆者は、AIルフィの待つ集英社神保町3丁目ビルへ向かった。

まず〝AIルフィ〟の凄さを体感してみる


AIルフィ本体は高さ190cm。地震に耐えるため重心が低く、重量もなかなか(撮影:和田篤志)

いた。
集英社のロビーに、高さ2mほどの大きな箱に収まったルフィが、いる。
耳に馴染んだあの声で「こっちに来いよ!」と手を振っている。

………
これは我々にしゃべりかけているのか?

誘われるがまま近づき、ルフィとコンタクトをとってみる。

取材陣の質問に次々と答えてくれるAIルフィ。ルフィにしっかり聞き取ってもらうためには、真正面からゆっくり話しかけるのがコツ
(動画撮影:集英社オンライン編集部)

仲間のこと、集英社のこと、そして週刊少年ジャンプ編集部のこと。
実験と銘打った段階でもかなりのセリフをマスターしていて驚いた。

さらに感動したのは、ルフィが目を見て喋ってくれることだ。
映像ではなかなか伝わらないが、この「ルフィと会話している」という感覚は、『ONE PIECE』という作品と長年関わってきた筆者でも味わったことのない新鮮味があった。

集英社のAIルフィ担当者に尋ねると、こういうことらしい。

  • 本体に一番近い人に目線が合うように作られている。
  • 一番近い人が離れると、次に近い人を探して目を合わせる。
  • マイクは指向性を持っていて、正面の狭い範囲を拾うよう設定されている。
  • なので周囲が多少騒がしくても目の前の人間の声を認識してくれる。
  • 音声は合成。アニメの音声素材と、田中真弓さんの新規収録分とを合わせてAIルフィの元となる音声を作成。
  • それをAIを用いた合成技術で、音声を自動生成している。
  • 発言内容はあらかじめセットしたセリフを喋らせている。
  • 質問された内容に入っているキーワードを認識して、セットした内容からAIが選択する。

ざっくりまとめると
「設定された質問にしか反応できないが、その返しは自然体のルフィそのもの」
ということである。
事前収録した映像を流しているわけでなく、あくまでAIの合成技術の賜物。
すごい。
本当にすごいことだが……。

ルフィに受付させるための超技術って、どうしてそんなことしてるの!?
という大きな疑問が頭をもたげてきた。

〝バーチャル警備員〟の応用形がAIルフィ


道案内もお手のもの。設定すればQRコードの表示もできるようになるとのこと(撮影:和田篤志)

説明会に同席していた、セコム株式会社と
株式会社ディー・エヌ・エーの担当者にうかがったAIルフィの誕生秘話———。

そもそもセコムとDeNAが協力して、〝バーチャル警備員〟を作るプロジェクトがあったという。
セコムの持つセンシング技術と、DeNAが持っているAI技術。
これを組み合わせれば「警備員さんの自動化、効率化」ができるのではないかと。

24時間リモートで監視してくれて、会話もできるAI警備員。
そんなことができたら、さらに人々の安全が確保できる。

そこでまず人間の警備員の姿をベースに、実写のような3Dモデルを作ったそうだ。
本物のような安心感が、そばに。これは心強いはずだ。

ところがいざ実際に出来上がった警備員の実写CGモデルは違和感の強いもので、いわゆる「不気味の谷」と呼ばれる、ロボットなどの見た目が人間に近づく過程で気持ち悪く見えるポイントを越えられていなかったものだったとのこと。

反省を活かし、キャラクターのグラフィックを日本人が慣れ親しんだアニメ風の警備員モデルに見直すとともに、自然な動きになるよう動きのロジックも改良。
契約先や自社施設でのフィールドテストも重ね、そこで得られた知見をベースに、応対者の言葉がどう認識されたかわかるよう画面で表示したり、設置空間に一層なじむように筐体の側面もミラー状にするなど改善を重ねて「バーチャル警備システム」が完成。今年1月に発売を開始した。

だが、警備だけの利用にとどめてしまうだけではもったいない。これは他の用途でも活用できるポテンシャルを秘めている気がする…。

そんな時、DeNAの違うチームで「集英社DeNAプロジェクツ」が発足した。

2社で会社を作り、新たなエンタメを創造しよう。
この流れはDeNAのバーチャル警備員チームの耳にも届いた。

そうだ、愛らしくデフォルメされた集英社の人気キャラクターが登場して、ファンとコミュニケーションができるようにしたら、新たな地平が開けるかもしれない。

このプロジェクトは漫画・アニメとの親和性がとても高い。
そうしてバーチャル警備員チームは開発してきた技術を活かし、エンタメ分野でも活用できる可能性を探る———。

これが〝AIルフィ〟誕生の始まりだったそうだ。
……想像した以上に熱い話だった。
最初「ルフィが受付できるの?」とか思ってしまい、申し訳ございません!

まだ未完成のAIルフィをみんなで育てよう


思わぬ質問に、ちょっと考えているポーズのルフィ。AIだろうとルフィはルフィ。難しい質問は禁物である(撮影:和田篤志)

高い完成度を見せているAIルフィだが、まだまだ実験中。
実装可能な技術はたくさんあるそうだが、まずは「ルフィと喋れたら人はどんな反応をするだろう?」という情報収集のフェーズだ。

実験期間中に新しいセリフも増やせるそうでその都度、話しかけた人の反応も見ていくという。

そして成長したAIルフィは今後、『ONE PIECE』にまつわるイベント会場に行ったり、駅や空港で観光案内をしてもらうことも想定しているという。

「ナミにここにいろって言われたから」と、おとなしく集英社にいるルフィ(AIルフィに、ナミについて聞くと、このように答える)。
これからその内蔵エピソードだけでなく、システムそのものが肉付けされていくと思うと心躍る。

集英社にいらっしゃる関係各位のみなさま。
集英社神3ビルに行くことがあれば、AIルフィに話しかけてもらえると幸いです。
みんなで話しかけて、みんなのAIルフィを成長させましょう!

【AIルフィ実証実験】
期間:2022年3月24日(木)〜4月15日(金)

場所:集英社神保町3丁目ビル 受付横
※来社された方や社員の方限定となります。実証実験のため一般公開はございません。
※SNSへの投稿は行っていただいて構いません。
※今夏に一般向けの実証実験を予定しております。

スチール撮影/和田篤志 動画撮影/集英社オンライン編集部 取材・文/藤下元気(オムカレー)
©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

尾田栄一郎
漫画家
熊本県出身。1997年より週刊少年ジャンプで『ONE PIECE』連載開始。2021年に連載1000話を突破し、単行本も第100巻が発売され(2022年4月現在、既刊102巻)、2022年4月現在の単行本世界累計発行部数は4億9千万部を数える。2022年は連載25周年記念イヤーとなり、8月には劇場版「ONE PIECE FILM RED」の公開が予定されている。

ONE PIECE.com(ワンピース ドットコム)
https://one-piece.com/
https://twitter.com/opcom_info

藤下元気(オムカレー)●ふじした・げんき
ライター
1980年、長崎県佐世保市生まれ。2000年に編集プロダクションへ籍を置いて以降、22年間ジャンプ関連の記事や書籍制作に携わっている古参勢のひとり。2013年にフリーランスとして独立し、のちに制作プロダクション 合同会社オムカレーを設立。長年培ったキャラクターコンテンツの知見を以って、シナリオ企画・執筆・監修、書籍制作、各種SNS運用など多岐に渡って活動中。

集英社オンライン編集部
https://shueisha.online

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