医療情報サテライト

Vol.4 骨粗しょう症とは? 第2回(全3回)

監修/辻 秀一先生
骨を強くする運動って?
なぜ運動が大切なのでしょうか?それは骨に適度な負荷をかけないと、カルシウムが沈着しないからです。無重力空間に長くいる宇宙飛行士は、地球に戻ると、骨量が減少しています。これは、無重力空間では骨に負荷がかからないからです。実は骨の形成には、外から力が加わることが必要です。片足立ちをするだけで、立っているほうの足の骨には、普通の状態の3倍も負荷がかかり、骨の形成が促進されます。
また、運動することによって、筋肉の量が増えると運動のエネルギー源であるグリコーゲンの貯蔵量が増加するので疲れにくくなります。体格のバランスが安定するので、転倒による骨折の危険性を回避することも可能ですし、運動そのものが骨密度を上げるまたは維持する効果があるので、転倒の予防と骨密度の両面から骨粗しょう症のリスクは減るわけです。

1日に平均25分間の運動で骨が強くなる
平均年齢52~53歳の女性のうち、「運動をしない人たち」は1年後に全身の骨のカルシウム量が約20gも減っていたのに対し、「1日に平均25分間の室内運動をした人たち」では平均約20gも増えていました。

運動のポイント1 手軽に始められるウォーキングがお勧め
まずは無理せず軽い運動をしましょう。ふだんあまり運動していない人が、いきなり激しい運動を行うのは、けがのもとです。自分の年齢と体力に見合った、無理のない範囲で運動しましょう。特に高齢者は、無理をせず、まずは家の中でもできる軽い筋力トレーニングから始めましょう。
散歩がてら歩いてみましょう。ウォーキングは体への負担が少なく、誰でもどこでも手軽に行えます。ゆっくりでもかまわないので、家の近くを散歩がてら歩いてみましょう。慣れたら少しずつ、歩く距離や時間をのばしてみましょう。

運動のポイント2 歩く速度を上げる、荷物を持って歩くなど
散歩に慣れてきたら、歩くスピードを少し速くしてみます。正しい歩き方を心がけてください。買い物袋を持つなどして、足への負担を少し加えるのもよい方法です。また、階段の上り下がりもよい運動です。
大切なのは、できるだけ長く続けることです。運動は骨の形成・維持だけではなく全身の健康にも有効ですから、ぜひ日常生活のなかに習慣づけるようにしてください。

運動の効用とは?
本来運動の効用は人と比べるものではなく、生活習慣や食生活の改善も含めてAさんがAさんの中でより高いレベルに達することが真の運動の効用です。AさんはBさんやCさんのレベルを目指して無理をする必要はないのです。
運動してもやせないとか、数値が改善しないとかでドロップアウトする人もあります。しかし、加齢とともに代謝量がダウンしたり血圧が高くなったりするのはいたしかたないことです。運動の目標は現状よりやせるとか血圧がさがるとかいうことばかりではありません。むしろ運動してもちっともやせないとか数値が改善しないとかいうことは、加齢現象を超えて現状を維持しているという点で運動の大きな効用といえるのです。

第1回
第2回
第3回
骨を丈夫にする食生活って?
骨を強くする運動って?、1日に平均25分間の運動で骨が強くなる
辻 秀一先生プロフィール