
心配されなくてよいと思います。以前はまれに内視鏡による感染症の報告がありましたが、『消化器内視鏡機器洗浄・消毒法ガイドライン』が作られています。これに準拠した方法で洗浄消毒を行っている施設であれば、一般細菌や肝炎ウイルスなどが感染することはまずないと考えてよいと思います。

内視鏡検査はきわめて普及し、特に日本では検査件数も多く、多くの専門医が養成され、検査の水準は国際的に見ても高いということをご理解ください。
それでも、内視鏡検査の前にもちいる咽頭麻酔や胃腸の動きを止める薬、鎮静剤などの薬のアレルギーによる危険、内視鏡を挿入することに伴い消化管を損傷する危険、組織を採取する生検による出血などの危険、さらには、内視鏡で行う治療処置に伴う穿孔や出血などの危険は、稀ながら避けがたい場合があります。
最新の日本消化器内視鏡学会の偶発症の調査では、全体で見ると、内視鏡検査の死亡率は0.00084%、出血、穿孔などの偶発症の頻度は0.018%、と報告されています。

食道や胃、大腸の病気で粘膜に限局した比較的小さな病変は、内視鏡にて切除することが可能となっています。具体的には、胃では、胃ポリープ、胃腺腫、胃癌(粘膜層に限局しているもの)などです。大腸でも同様に、大腸ポリープ、粘膜層に限局した大腸癌などで治療可能です。
ただし、癌のひろがりは切除した病理所見により最終的に定まるため、追加治療が必要になることもあります。また、大きな病変の治療には時間がかかり、出血や穿孔などの偶発症の頻度が増加するリスクがあります。したがって内視鏡の治療が最もよいのか、他の治療(腹腔鏡を用いた腹腔鏡下手術や通常の外科手術)との比較検討も行い、患者さまと医師との間でよく相談した上で、最終的に決める必要があります。
このほか、出血病変の止血、アニサキスという寄生虫の診断摘出、異物の除去、狭窄病変の拡張などに通常、内視鏡が用いられます。なお図7、8の粘膜に限局した小さな胃癌を治療し、切除した直後の内視鏡写真が図9です。
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図7 |
小さな早期胃癌の写真。矢印に囲まれた部分に粘膜にやや赤みをおびた粘膜に限局した癌を認める。 |
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図9 |
内視鏡的粘膜切除術により病変を取り除いたあとの写真 |
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