医療情報サテライト

Vol.1 乳がんについて


まず一番重要な視診、触診があります。
長い期間、沢山の乳房の診察をしていると、小さい乳癌を触診でみつけることが出来ます。
0.5cm位の大きさなら充分に触知可能かと思われます。
次に、触知したしこりの確定診断の為、あるいは触知不可能な乳癌もあり、腫瘤を形成しない乳癌もありますから、レントゲン検査や超音波検査が一般的に行われています。
その他、とゼロラジオグラフィー、乳管造影、CTスキャン、MRI、サーモグラフィー等いろいろあります。
しかし、全ての病院で、これら全てが揃っているわけではありません。
また、最近話題になっていると遺伝子診断がありますが、この診断で黒と出ても、何歳で発生するのか、左右どちらの乳房に発生するのか判明しないようです。
危険だということで予防的に両方の乳房を切除するということはどんなものでしょう。
やはり、こまめに自己検診し、病院を訪れて検査を受けなければならないと思います。
しこりが確定され、癌の疑い、あるいは癌と思われた場合は、入院、手術等を考慮し充分注意の上、細胞診、組織診を行います。
視触診や画像診断でほぼ癌と診断可能な腫瘤に対してむやみに細胞診、組織診は行うべきではありません。
血行性の転移が考えられるからです。
また良性と思われるしこりに対しても細胞診や組織診を行い確定診断の必要があります。
全く良性と思われるしこりでも、癌の場合もあるということを常に念頭においておくべきです。




乳癌の治療には、大きくわけると「局所療法」と「全身療法」があります。
癌が転移してしまった病期Ⅳの乳癌は全身療法をしなければなりません。
化学療法(制癌剤)、内分泌療法、あるいは今後さらに進歩すると思われると免疫療法、遺伝子治療等があります。
癌が乳房にとどまっており、乳房周辺のリンパ節にとどまっていれば、局所療法いわゆる外科手術が第一選択肢になります。
乳癌の手術が行われ始めたのは紀元前200~300年頃からで、病期Ⅲ、病期Ⅳでも、しこりのみ切除する方法でした。
しかし、どうしても再発、死亡を防ぐことができず、手術そのものが乳癌に対して悪い影響を与えているのではないかといわれていた時代もありました。
今から思えば、病期Ⅲ、Ⅳの大きくなったしこりに対して、直接メスを入れるのですから、転移を促進させたり、その時すでに遠隔転移が起こっているはずなのに、そのために死亡するということに気付かなかったことでしょう。
しかし、1882年になって、米国のジョンス・ホプキンス大学のハルステッドが根治術式を確立しました。
その後いろいろ改良されて乳癌を手術で治せる時代がつづきました。
近年はハルステットの時代とは比べものにならないくらい早期の乳癌を見付けることが可能になり、手術がどんどん縮小傾向になり、現在では、乳房をほとんど残す手術が主流となっています。
しかし、乳房温存術以外には手術がないと誤解している人が見うけられます。
この術式は、しこりが小さいうちに見付けた早期発見の乳癌に限られていることを充分に理解しないといけません。
今でも、癌の種類や、出来た部位、進行した癌等では乳房を全部取り、リンパ節も取らなければなりません。

以上の様に自己検診から始まり、細胞単位で癌の診断をし、適切な手術を受ければ、まず乳癌で死亡することはないでしょう。

乳がんについて
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乳癌の自己検診
乳癌の診断、乳癌の治療
高須 良雄(たかす よしお)先生プロフィール