その他安全 2025年11月05日

第439回 乳がん治療について「今、知っておきたいアドバイス」

乳がんは、今や女性の9人に1人がかかるといわれる時代。
医療の進歩とともに、治療の選択肢や生活の質(QOL)を保つ工夫も大きく進んでいます。

四谷メディカルキューブの乳腺専門医 林 光博先生に「乳がん治療の最前線や、知っておきたい乳がんとの向き合い方」について聞きました。

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プロフィール

林 光博先生
四谷メディカルキューブ 乳腺外科 部長
乳腺専門医

どこで検査を受ける?病院・検診の選び方と費用

Q
乳がんの検診や診察には、どのくらい費用がかかりますか?
A
林医師:
保険診療(健康保険証を使った診療)の場合、全国的に費用はほぼ統一されています。

3割負担の方で以下が目安です。
・2D~3Dマンモグラフィ:2,000~3,000円
・超音波(エコー):1,000~2,000円
・造影MRI:7,000~8,000円

自費診療での乳がん検診は、医療機関によって価格に幅があります。
・2Dマンモグラフィ:5,000~10,000円
・3Dマンモグラフィ:10,000~15,000円
・超音波(エコー):5,000~8,000円
・単純MRI:20,000~40,000円
・造影MRI:40,000~60,000円

検査内容や機器の種類によっても異なるため、事前に医療機関へ確認するのが安心です。
Q
職場の健診と自治体の検診、両方で受けても良いのでしょうか?
A
林医師:
職場の健診も自治体の検診も、両方受けられます。
検査方法の違いや診断の精度が補完されるメリットもあります。

何か症状があるなら、検診ではなく診断のための検査を専門の医療機関で受けたほうが安心です。
Q
検査を受ける医療機関はどのように選べば良いのでしょうか?
A
林医師:
乳がん検診を受けられるのは、主に乳腺外科や一部の婦人科、人間ドック施設などです。
症状がなく、健康管理の一貫として乳がん検診を受ける場合は、自分で医療機関や検査内容を選ぶことになります。

何らかの症状がある場合や、自治体の検診ではなく保険診療で受診する場合は、医療機関側が症状や必要性に応じて検査の内容を決めるのが一般的です。

価格やアクセスのしやすさも大切ですが、可能であれば乳腺専門医がいる医療機関や、「日本乳がん学会認定施設」など、専門性の高い施設を選ぶと安心です。
3DマンモグラフィやAI診断などの先進的な検査機器を導入している病院もあります。

はじめて検診を受ける方や、検査内容に迷う方は、医師の問診と診察がある医療機関で、まず乳腺エコーを受けてみるのも良いでしょう。
必要に応じて、追加の検査やその後の検診の方針について相談できます。

乳がん治療の進歩「怖い」だけではない時代に

Q
乳がんと診断された場合、手術やその後の苦しい闘病生活をイメージする女性が多いと思います。乳がんの治療は、やはり手術と抗がん剤治療が一般的なのでしょうか?
A
林医師:
乳がん治療は、ここ数十年で大きく変化しています。 かつては「乳房の全摘出」が一般的でしたが、今では「部分切除」や「乳房温存療法」が主流です。
手術したのがわからないように治せる時代になりつつあります。

さらに最近では、手術を行わず、ホルモン療法や抗がん剤、放射線治療を組み合わせて進行を抑える非手術的治療も注目されています。

また、「抗がん剤治療が不安」という声もよくお聞きしますが、最近では「抗がん剤治療をしない」という選択肢もあります。
たとえば、がんのタイプや進行度によっては、ホルモン療法や手術のみで治療するケースも。
「がん=抗がん剤」というイメージにとらわれすぎず、主治医としっかり相談してみてください。
Q
乳がんの治療法は、病院によって異なるのでしょうか?
A
林医師:
病院や医師によって、それぞれ得意とする治療法(温存手術、再建、薬物療法など)の傾向があります。病院のWebサイトで情報を集めておくと納得感のある選択がしやすくなります。

乳がんと診断された直後は動揺しがちですが、自分で納得して選ぶことがとても大切です。
信頼できる主治医とじっくり話すのはもちろん、別の医師に意見を聞く「セカンドオピニオン」を受ける人も増えています。
「わからないことを放置しない」「納得できるまで質問する」姿勢が、自分の不安をやわらげ、前向きな一歩につながるはずです。
Q
手術後の見た目を心配する方は多いと思います。再建は可能ですか?
A
林医師:
乳房再建手術も選択肢は増えています。
手術と同時に再建を行う「一次再建」、治療後にあらためて再建する「二次再建」のどちらも可能です。

シリコンインプラントや自家組織(お腹や背中の筋肉)を使う方法などがあり、医師と相談して自分に合った方法を選ぶことができます。
見た目の変化による精神的なダメージを軽減することも、治療の大事な要素のひとつです。

今できる予防と、もしものときの心構え

Q
乳がんのリスクを下げるために、日常生活でできることはありますか?
A
林医師:
乳がんの発症リスクには、遺伝子や性ホルモンといった避けがたい要因もありますが、日々の生活習慣によって下げられる可能性もあります。

特に注意したいのは アルコールと喫煙。
これらは乳がんのリスクを高めることが知られており、できる限り控えることが推奨されます。
たばこの種類を問わず、喫煙されている方には禁煙をおすすめします。

食事では、新鮮な野菜や果物を意識して摂ることが大切です。
動物性脂肪や糖分・人工甘味料の摂取過剰に気をつけ、健康管理に努めましょう。

週に2~3回、30分から1時間程度の軽い運動(ストレッチ、ヨガ、ピラティスなど含む)を取り入れることで、血流やリンパの流れ、ホルモンバランスが整い、睡眠の質も向上します。
これらは、がん予防にもつながると考えられています。

普段から健康管理を心がけていても、乳がんになる可能性はあります。
しかし健康管理に努めているほうが、乳がんの悪性度が低かったり、治療への体力があったり、良い方向につながることは間違いありません。
Q
最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
A
林医師:
人生をともに歩む自分の体。
乳がんは「自分の体と向き合うチャンス」にもなりうる病気です。
ぜひ、普段から自分の乳房に意識を向けてください。

これまで一度も検査を受けたことがない、もしくは検査の痛みが心配な方は、「超音波エコー」や「MRI」での検診を受けてみると良いと思います。
そのときに、医師やスタッフと一緒に自分の乳がんリスクや、これからの検診計画を相談できると理想的です。

余裕があれば、乳がん検診や治療に関する新しい情報にも目を向けてみましょう。
乳がんは、今や「9人に1人」がかかる病気。
リスクが低いと思っていた人ががんにかかることもあれば、「がん家系」ではない人が診断されることもあります。
「自分には関係ない」と思わずに、正しい知識を持っておくことが大切です。

「乳がんは怖い病気」というイメージを持っている人も多いと思いますが、正しい知識と治療があれば、きちんと立ち向かえます。

乳がん検診は、あなたの健康を守るための備え。
いつからでも、どんなタイミングでも、はじめられます。
安心して検診を受けてください。

* * * * * * * * *

自分や家族の未来を守るために何より大切なのは、乳がんを早く見つけること。
「そのためのアクションを恐れないでほしい」と林医師は言います。

まずは、自分の体と向き合うことが、将来の不安を減らす第一歩です。

・乳がん検診に行く
・生活を見直す
・乳がんについて誰かと話してみる

今日から、できることから、はじめてみませんか。

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