開催レポート
番外編
「ミレニアルカルチャーをサイエンスする」
2019年3月27日、国立大学法人電気通信大学が主催する匠ガールプロジェクトのイベント「最先端ラボの研究者に会いに行こう!」の中で、「セコムオープンラボ」の番外編を開催しました。匠ガールプロジェクトは、国立研究開発法人科学技術振興機構による平成29年度「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」の一環です。女子中高生の理系進路選択支援というマインドに共感してご協力しました。
理系進路を目指す女子中高生30名とともに開催する今回のテーマは、「ミレニアルカルチャーをサイエンスする」。
「ミレニアルカルチャー」とは、ここでは、物心ついたときからインターネットが当たり前にあり、絶え間ないつながりに慣れ親しみながら育った世代を中心に生まれる、新しいカルチャーとその時代感を指しています。社会が豊かになり、さまざまなモノが大量生産・当たり前となることで、モノがもつ機能性よりも背景・文脈(コンテキスト)が重要視されるようになってきました。そうした現代において、これからサイエンスを志向する若いみなさんに、議論をして仮説を立てて、どうすれば実証可能となるかを考える体験を通じ、科学を広くとらえてもらう事が狙いです。
今回は特に「エモい」という価値観の定量的評価に挑戦。「エモさ」自体の認識のギャップも大きく、カルチャーの変化の速さを再確認するとともに、これからの世代が形作る未来を垣間見ることができました。
開催日時
2019年3月27日(水)
総合ファシリテーター
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沙魚川 久史
セコムオープンラボ総合ファシリテーター。東京理科大学 総合研究院 客員准教授、国研 科学技術振興機構 専門委員、ものこと双発協議会 事務局長。
セコムにて研究開発・コーポレート全般の企画業務に携わり、セコムのオープンイノベーションチームを率いる。イノベーション推進に向け「セコムオープンラボ」を主宰。東京大学イノベーションマネジメントスクール修了、東京理科大学大学院 総合科学技術経営研究科修了、同院イノベーション研究科修了。専門領域はサービスサイエンス・技術経営・知財マネジメントで、大学や国立研究開発法人、産学官コンソーシアムなどでも活動しながら公私にわたりサービス創造の視座より共創協働を推進している。
当日の模様
今回は、理系進路を目指す女子中高生30名とともに「セコムオープンラボ」の番外編を開催しました。
これは、電気通信大学が主催する匠ガールプロジェクトのイベント「最先端ラボの研究者に会いに行こう!」によるもので、科学技術振興機構による平成29年度「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」の一環です。女子中高生の理系進路選択支援というマインドに共感してご協力しました。
今回設定したテーマは「ミレニアルカルチャーをサイエンスする」。
「ミレニアルカルチャー」とは、ここでは、物心ついたときからデジタル化とインターネットが当たり前にあり、絶え間ないつながりに慣れ親しみながら育った世代を中心に生まれる、新しいカルチャーとその時代感を指しています。社会が豊かになり、さまざまなモノが大量生産・当たり前となることで、物質的な差別化が困難になりつつあり、モノがもつ機能性よりも背景・文脈(コンテキスト)が重要視されるようになってきました。
そうした現代において、これからサイエンスを志向する若いみなさんに、議論をして仮説を立てて、どうすれば実証可能となるかを考える体験を通じ、科学を広くとらえてもらう事が狙いです。
イントロダクションでは、多様な視座の議論から新しい社会の課題感を捉えて価値検証を行う研究開発フィードバックループと、そのなかで「セコムオープンラボ」が持つ意味、この場から生まれている様々な社会実装についてご案内しました。そして、本日のテーマ「ミレニアルカルチャー」に関するいくつかの切り口について共有しながら、議論のトーンを整えていきました。
続くワークショップでは、全国から集まった30名の女子中高生が、セコムIS研究所の若手研究員と共に6グループに分かれてディスカッションを行います。感情が揺さぶられたときの表現として「エモい」というキーワードをピックアップし、ワークショップ前半では、「エモさ」をどう定義できそうかを議論。
「エモさ」とはどういう感情か、どんな時に「エモさ」を感じるか、それぞれ考えや体験を共有。「懐かしさ」、「新しさ」、「共感」、「憧れ」、「時代の変化」など、多様な意見に刺激を受けながら、それぞれの価値観を掘り下げていきます。
ワークショップ後半では、前半で定義した「エモさ」を計測する方法を探索。
人によって異なる価値観をどうやって定量化するのか。普段考える機会の少ない課題に試行錯誤しながら議論を進めます。身体の変化、ソーシャル情報、行動パターンなど内的/外的な様々な評価軸を出し合いながら、「エモさ」の可視化に挑戦していきます。
ここで出てきた、幾つかの興味深いアイデアを、簡単にですがご紹介します。
- 主観的指標として自分がその「エモさ」に払ってもいい金額と、科学的指標として脳波数値、および他者の共感度合からなる関数から「エモさ」指数「Ec(エモセント)」を導入。VRで様々なシーンを体験してもらい、そのコンテキストのエモさを計測すると同時に、同じエモさを共感する人と仲良くなれる。
- 「エモい」と感じたシーンに対して詩歌を作成するスマートフォンアプリ「いとをかし」。「エモい」シーンに対して詩歌を作り共有してもらうことで、どんなことに対して「エモさ」を感じるかがわかる。詩歌を通じて、時代を超えてエモさを計測することが可能になる。
- 「エモさ」を、共感・感動・憧れなどのポジティブな感情と捉え、SNSの評価・閲覧数・閲覧時間などから、各年代、性別、地域などの属性に分けて共感度を分析する「『エモ』CONNECTION」。需要の理解から新規コンテンツの開発など様々なビジネスへ展開できる。
ワークショップ後には、大判のアイデア整理シートに各テーブル内での議論をまとめ、その成果を発表して参加者全員でシェア。参加者全員による投票を行い、もっとも多く共感を集めたグループを「優秀共感賞」として表彰しました。賞に選ばれたグループのメンバーには、ささやかですがセコムの記念品をお贈りしました。
今回は、理系進路を考えている女子中高生に、感性や価値といった目に見えないものをどのように定義し、定量化するか、というサービスサイエンス的アプローチに取り組んでいただきました。当事者同士のこのようなディスカッションはインタビューや行動観察そのものと言うこともでき、その洞察から生まれたそれぞれのアイデアが研究の核となる仮説です。
この新しく発掘された仮説を、実験し検証して、新しい価値創造につなげることが、企業が取り組むサイエンスであると言えます。今回のセコムオープンラボで、研究の種を共に探索し、研究から社会へのつながりを体験することで、理系進路への興味をより深めるお手伝いができたならば幸いです。ご参加いただいた皆さまのご活躍を期待しています!