開催レポート
第5回:訪日外国人6000万人時代の『もの・こと・わけ』

今回は、「訪日外国人6000万人時代の『もの・こと・わけ』」と題して、6000万人が来訪するようになる日本の社会環境について、プロダクトやサービスの課題を探索し、それを解決するためのアイデアディスカッションをテーマに開催しました。

近年、訪日外国人の数が大幅に増加しており、2012年に836万人だった訪日外国人数は、2015年には1974万人となりました。
これを受けて、政府は昨年、訪日外国人数を2020年に3000万人、2030年に6000万人まで増やすという目標を立てましたが、訪日外国人の増加に伴い様々な課題が出てくると予想されています(政府主導による「明日の日本を支える観光ビジョン」2016年3月30日策定)。
そこで、今回はそうした課題をテーマとして採り入れ、訪日する側・迎える側、双方の課題となってくるであろう要因(“わけ”)をあげながら、それを解決するアイデア(“もの”あるいは“こと”)を出し合うワークショップを行いました。

話題提供では、訪日観光客の実像や行動・目的について、株式会社電通の髙橋 邦之さんから参加者へのインプットをいただきました。ワークショップでは、分野・業界を越えた多様な参加者がそれぞれの視座から、「どうすれば訪日外国人6000万人を受け入れられるか」「6000万人が来日した際に発生する課題をどう解決するか」等について議論を交わしアイデア創造を進めました。10年先の課題を見つめ、意見を共有することで、未来に向けた気づきを得る場として盛会に開催することができました。

開催日時

2017年2月13日(月) 17:00〜20:00

話題提供者

  • 株式会社電通
    髙橋 邦之

    ビジネス・クリエーション・センター ビジネス推進室 専門領域プロデュース1部/プランニング・ディレクター。
    1994年電通入社。営業として化粧品、金融、大手ファッションブランド、自動車メーカーなどを担当。インキュベーション部門で電通初のCRMサービスを起案(ビジネスモデル特許取得)、その推進を図る。プロモーション部門ではメディアとプロモーションの融合をテーマに、コラボレーション企画を多々手掛ける。 現在、電通ならではの観光インバウンドビジネスを目指し、ソリューションを開発する社内横断チームのプロジェクトリーダーを務める。

  • 総合ファシリテーター
    沙魚川 久史

    セコムの研究開発部門を経てセコム科学技術振興財団事業部長として若手研究助成を立案した後、セコム企画部主務にてオープンイノベーションを推進。セコムオープンラボ総合ファシリテーター。東京大学イノベーションマネジメントスクール修了、東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科修了、東京理科大学大学院イノベーション研究科修了。
    大学や国立研究開発法人、産学官コンソーシアムなどでも活動しながらサービス創造の視座より産学官の連携を推進している。東京理科大学 総合研究院 客員准教授、JST 専門委員、ものこと双発協議会 事務局長。近著は「連携で創造するサービス・イノベーション」(『産学連携学 第12巻2号』産学連携学会,2016年)。

当日の模様

今回は、テーマにあわせて、株式会社電通で観光インバウンドビジネスを開発する社内横断チームのプロジェクトリーダーを務める髙橋邦之さんに話題提供を行っていただきました。
髙橋さんからの話題提供では、国別の来訪時期の違いや文化的な訪日の目的、訪日する側・迎える側双方が抱えている課題など、一般にはあまり知られていない“こと”“わけ”まで深堀りした内容をご紹介いただきました。

その後、業種業界の異なる33社51名の参加者が、7グループに分かれて、議論を開始。「6000万人が来訪する社会像」について得た切り口や事例を参考に、ワークショップへと進みました。ワークショップでは、ワークタイムを細かく切りながら、時間帯に応じて出されるお題や観点にあわせて、それぞれの視点から議論を展開。最初の時間帯は、課題探索(どういう“わけ”)のワークを行いました。
「もの」と「こと」だけでなく、まずその裏にある「わけ」を考えることが、社会に価値を提供する上では非常に重要です。人々が「もの」「こと」に至る「わけ」は時代や環境によって変化しており、私たちセコムは、社会が成熟するなかで進化する「わけ」への対応がサービス・イノベーションの一つの重要な要と捉えています。ここでは、「6000万人が来訪する社会の不安や問題点」について視座の異なる多様な参加者から、普段気づかないような数多くの課題が集められ、マッピングされていきました。

また、今回の開催では、テーマが「訪日外国人6000万人」ということもあって、訪日外国人の目的の一つである「食」にも注目し、軽食として創作おにぎりを用意。新機軸の日本の食を全員で体験しながら、6000万人が来訪するようになる日本の社会環境における、不安や問題点、心地悪さ、社会やプロダクト、サービスの課題について、各グループで賑やかにディスカッションを行いました。

コーヒーブレイクタイムを挟んだ後のワークショップ後半では、ディスカッションで出てきた課題を踏まえ、各グループで「解決アイデア(どういう“もの・こと”)」の探索を行いました。
前半に議論された課題や他のグループで出てきた課題を融合して、その一つ一つが創造に至る「わけ」となって、未来の社会に求められるアイデアへと繋がっていきました。多様な背景を持つ参加者が集まったこともあり、グループごとにユニークな発想が生まれました。
ここで出てきた、幾つかの興味深いアイデアを(名前だけですが)ご紹介します。
  • 日本文化への理解を深めてもらうための、訪日外国人向け「日本文化マイスター制度」
  • 伝統芸能の担い手不足とコンテンツを補うための、「伝統技能体験」
  • 訪日外国人同士でリピーターが初来日者を案内する制度づくり「ザビエルビザ」
  • 体験ツアーとして雪でかまくらを作って宿泊してもらう「かまくらホテル」
  • 旅行者向け施設を完備した「巨大移動式人工島」を作り、日本を周遊
  • 地方で田舎風土や暮らしを体験してもらい分散化する「くらたびツアー」
  • 日本人から見て相手が全て日本人に見えることでコミュニケーションを促す「日本人VR翻訳システム」
  • 宇宙ホテルを作り、種子島経由で招待する「宇宙ハブソリューション」
最後に、各テーブルでの議論の成果を参加者全員にシェアした結果、参加者からもっとも評価されたテーブルのメンバーそれぞれに「セコムの食」を副賞としてお贈りしました。
多様な参加者が集まり、知識や発想を融合させて、ユニークな課題認識/尖った視点がたくさん得られました。集まったアイデアは、参加者それぞれが持ち帰り、各々の視座から新たな“気づき・きっかけ”として活用いただけることと思います。また、アイデアだけでなく、異なる背景を持つ参加者間で多くの気づきと新しい交流が生まれる場となりました。

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