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心筋梗塞の治療は、血栓を酵素で溶かす「血栓溶解療法」や風船付きの管で血管を拡げる経皮的な「冠動脈インターベンション」、拡げた血管を金属の網の筒で支える「ステント」など、この20年間で大きく進化し、また成果もあげています。しかし、これらの治療を行うには時間的な制約があります。一応、症状が出てから12時間以内であれば効果的といわれていますが、1秒でも早いに越したことはありません。

心臓は左の胸にあるから、症状も左の胸に出ると思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。実際には、腕や肩、みぞおち、下顎など、非常に広範囲です。症状も、ズキズキするような痛みというよりは、圧迫感、違和感、不快感として現れます。また、女性や高齢者、糖尿病の人は、息切れ、めまい、ふらつき、脱力感など、漠然とした自覚症状を訴える場合もあります。
このようなことを知らないと、肩や顎に違和感があるからと整形外科に行ってしまったり、みぞおちが不快だからと消化器内科に行ってしまったりして、実は心筋梗塞だったということも起こり得るわけです。一刻を争う病気だけに期を逃すと大変なことになりかねません。
ですから、狭心症や高血圧、高脂血症、糖尿病といった、何らかのリスク要因を抱えている方はもちろん、今は健康だという方も、心筋梗塞への理解を深め、早期発見を心がけることが重要です。

たとえば、心筋梗塞でショック状態に陥った場合のような重篤な症状なら、救急車で直接CCU(冠動脈疾患集中治療室)へ搬送されると思います。しかし、先にお話したような、はっきりと判断しにくい症状の場合は、まず24時間体制で心電図がとれ、血液の生化学検査が受けられ確実な急性心筋梗塞の診断る救急医療機関に行かれることをおすすめします。
そのためには、ご自宅からもっとも近い救急外来のある病院の場所をあらかじめ調べておいたり、既往症やリスク要因から考えられるご自身の救急診療内容について、かかりつけの医師と相談しておくのも必要でしょう。
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