医療情報サテライト

Vol.40 糖尿病 第2回(全3回)

監修/金塚東先生
病的肥満とは


 先ほど血糖というのは血液中に含まれるブドウ糖のことと言いましたが、ブドウ糖は重要な物質で、脳の唯一のエネルギー源なんですね。ですから、食事をしなくても、常に血液中に一定の量のブドウ糖濃度を保つ必要があります。そのために肝臓がブドウ糖をつくっていますが、インスリンがその量を調節しています。インスリンは、肝臓でつくられる糖の量を調節するだけでなく、糖を筋肉の中に取り入れるなど重要な働きをします。ですから、もしインスリンが何らかの原因でβ細胞から出が悪くなったり、肝臓や筋肉での働きが低下したりすると、肝臓でたくさんブドウ糖がつくられる一方、筋肉に糖が取り込まれなくなり、その結果、血液中のブドウ糖濃度が高くなる、即ち高血糖になります。この高血糖の状態が長期間続くと、血管と神経は大きなダメージを受けます。これが糖尿病性合併症です。


合併症には、細い血管の病気と太い血管の病気があります。
 細い血管の病気(微小血管障害)には糖尿病性網膜症糖尿病性腎症があります。
前者は眼底の血管におこる障害で、進行すると失明します。眼の病気はたくさんありますが、失明する原因のトップは糖尿病性網膜症ですから、糖尿病と診断されたら必ず眼の検査を受ける必要があります。後者は、腎臓で尿ができるところ、毛細血管が集まって毛糸の鞠のような形をした糸球体(しきゅうたい)が硬くなる病気です。これが進行すると腎不全になり、人工の腎臓を用いる血液透析をしなければならなくなります。
以前は慢性糸球体腎炎から腎不全になる人が多かったのですが、今は糖尿病性腎症から腎不全になる人が多くなっています。この二つは糖尿病にだけ起こる血管の障害です。
 太い血管、つまり脳や心臓、足の血管におこる病気即ち、糖尿病により動脈硬化が進行して起きる病気(大血管障害)で、代表的な病気に脳梗塞や狭心症があります。脳梗塞により半身不随や言葉の障害が起こります。狭心症は胸痛・痛みを感じますが、糖尿病の患者さんは痛みを感じない場合があり、かなり重症になってから分かることがあります。
生命に係わり、また心不全の原因になります。足の血管の病気には、閉塞性動脈硬化症があります。これは、足の血管が詰まる病気で、詰まると足の先が腐り、切断しなければならない場合もあります。
 もう一つは神経障害で、心臓・血管の自律神経が冒されると立ちくらみがしたり、胃腸の自律神経が冒されると便秘になったり、急に下痢になったり、膀胱(ぼうこう)の神経が冒されるとおしっこが出なくなったりして不快です。
また、糖尿病が進行すると感覚が鈍くなるため足の傷に気づかず、ばい菌が入って化膿し、壊疽(えそ)になる場合があります。  このように合併症は非常に厄介な病気ですが、ふだんから糖尿病の治療を怠らず、血糖をコントロールしていれば進行を阻止することができます。


糖尿病
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糖尿病
金塚東先生プロフィール

金塚 東(かねつか あづま) 金塚 東(かねつか あづま)
医療法人社団 誠馨会
千葉中央メディカルセンター
糖尿病センター長
医学博士
日本糖尿病学会専門医
日本糖尿病学会指導医

【略歴】
千葉大学医学部卒業
千葉大学医学部第2内科講師
大日本インキ化学工場 千葉工場診療所所長
千葉中央メディカルセンター 糖尿病センター長
千葉大学医学部非常勤講師
愛媛大学医学部非常勤講師

【所属学会等】
日本内科学会認定医
日本糖尿病学会専門医
日本糖尿病学会指導医
日本糖尿病学会1型糖尿病調査委員会委員