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胃の大半を切り取り、胃をバナナ1本くらいの大きさにして食事摂取量を制限する手術です。比較的新しい手術のため、長期成績がでていませんが、1-2年の短期での報告では良好な効果が得られています。ラップバンドと同様に食事摂取量の制限だけの手術ですが、異物を用いないため、異物による合併症は軽減できます。しかし、胃を切り取ってしまうため、手術の後に元に戻すということは出来ません。
● 腹腔鏡下袖状胃切除術のメリット
1. |
食事量が制限される手術ですので、体内に入ってくるエネルギーを減少できます。
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2. |
ルーワイバイパス術とは異なり、食べ物は通常どおりに消化吸収されます。
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3. |
術後にも胃や胆道の内視鏡検査ができます。
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4. |
短期成績ではラップバンドよりも良好な報告があります。
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5. |
もし体重減少がうまく行かなくなっても、二期的に腹腔鏡下胃バイパス術を行うことは比較的容易です。
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● 腹腔鏡下袖状胃切除術のリスク
1. |
胃を切り取ってしまうため、元に戻すことは出来ません。
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2. |
比較的新しい手術のため、長期成績は出ていません。そのためアメリカ肥満外科学会が2004年に定めた合議書にはまだ載っていない手術です。
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3. |
食事が通る部分の狭窄(狭くなる)が生じることや、吐き気や嘔吐が見られることがあります。
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4. |
小さくした胃が拡張してしまい、十分な効果が得られないことがあります。
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5. |
胃バイパス術ほどの減量効果、合併症改善効果は期待できないと考えられます。
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6. |
手術に関連する全般の危険性(感染、出血、血栓、縫合不全、肺炎、心臓発作、死亡など)があります。
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BMIが60をこえる超々重症肥満の方は、一度で手術をすると死亡率が高くなるといわれています。そのような方には、安全のため一回目の手術で胃を小さくして減量をはかり、減量がとまったところで胃バイパス術をするという二期的手術を考えています。
具体的には、まず腹腔鏡下袖状胃切除術(Lap Sleeve gastrectomy))を行い、BMIが50程度まで減量した時点、または減量が止まった時点で、二度目の手術として腹腔鏡下胃バイパス術、を行う方法です。
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胃の中にシリコンでできた風船を入れ、胃袋の容量を減らすことにより、食べられる量を少なくして体重減少をはかる方法です。内科的治療と外科的治療の中間に位置するものです。また、BIBは手術ではなく、胃内視鏡で行う処置なので、手術を受けることに抵抗のある方にもお勧めできます。
ただし、最長6か月までの挿入となりますので、長期的な効果をすべての方に期待できるわけではありません。また胃の中に異物をいれて胃内容量を減少させるので、気持ち悪い感じが数日間続きます。
BIBは比較的軽度の肥満の方、手術までは踏み切れない方、または超重症肥満で術前に減量するほうが安全である方を対象に行います。
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病的肥満に対する外科的治療によって、肥満による減量効果とおもな合併症の改善効果は、次のようになっています。
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胃バイパス術 |
バンディング術 |
減量手術全体 |
超過体重減少率 1) |
61.60% |
47.50% |
61.20% |
平均体重減少kg 1) |
43.5kg |
28.6kg |
39.7kg |
術死率 1) |
0.50% |
0.10% |
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術後合併症率 2) |
7.90% |
7.20% |
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再手術率 2) |
1.10% |
5.30% |
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満足しない減量の率 2) |
1.00% |
13.00% |
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糖尿病治癒率/改善率 1) |
83.7% / 93.2% |
47.9% / 80.8% |
76.8% / 86.0% |
高血圧治癒率/改善率 1) |
67.5% / 87.2% |
43.2% / 70.8% |
61.7% / 78.5% |
高脂血症改善率 1) |
96.90% |
58.90% |
79.30% |
睡眠時無呼吸改善率 1) |
94.80% |
68% |
83.60% |
1) |
Bariatric surgery: a systematic review and meta-analysis. Buchwald H, Avidor Y, Braunwald E et al: JAMA. 2004 14:1724-37 |
2) |
Brazil Sao Paulo Gastro Obeso Centerでの同一スタッフによる腹腔鏡下胃バイパス術:2012人、腹腔鏡下バンディング術1174人の検討(2005年IFSO発表) |
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