医療情報サテライト

Vol.37 肥満手術とは?第1回(全2回)

監修/笠間和典先生
病的肥満とは


肥満が「病的肥満」とみなされるかどうかは、肥満を原因とする重大な疾病があり、それが命にかかわるかどうかによります。病的肥満の合併症は、糖尿病、高血圧、心臓病、脂質代謝異常、肺閉塞、関節炎、睡眠時無呼吸症候群、うつ病などさまざまです。
体重が理想体重の2倍を越える病的肥満の患者さんの死亡率は一般の人の2倍、糖尿病や心臓発作による死亡の危険率は5~7倍といわれています。したがって、病的肥満は重大な疾患であり、患者さん自身は重病であることを認識する必要があります。


欧米での手術適応は

1.BMI 35以上で、肥満に起因する合併疾患を持つもの

2.BMI 40以上

とされていますが、アジア人は欧米人より低い肥満度で合併疾患を併発しやすいため、合併疾患の改善を最も大きな手術の目的をして、アジア人に対する手術を検討してまいりました。アジア太平洋肥満外科会議に創立メンバーの一人として参加し、適応について討論を続け、2005年2月の会議においてアジア人の手術適応を次のように規定しました。

1.BMI(=体重kg÷身長mの2乗)が32以上で、糖尿病またはそれ以外の2つの合併症をもつ方
  (身長160cmで82kg以上)

2.BMIが37以上の方(身長160cmで95kg以上)

※上記の適応を満たす方で、内科的治療の効果がなかった方

ただし、手術を受けるに際して最も重要なのは、これが楽をしてやせるための手術ではなく、患者様の命を守るための手術であることを十分に理解することです。また、治療に対して十分な意欲があり、手術後の長期にわたる食事療法、運動療法、フォローアップのための外来通院の重要性を理解していることが必要です。そして、なによりもご家族の理解と協力が不可欠です。また、手術をすれば簡単にやせられるというわけでもありません。患者様自身が、自分で自分のライフスタイルを変えようとする努力が一番大事なことです。手術は短期間の「きっかけ」に過ぎません。その後の栄養管理や精神面でのケアが手術と同じくらい重要となってきます。

なお、肥満が内分泌疾患または服用している薬物によって起こっている場合や、全身麻酔・手術が無理なほど状態が悪い場合など、手術を行えないケースもありますが、まずはご相談ください。


病的肥満とは
第1回
第2回
病的肥満とは
減量手術の手術法
笠間和典先生プロフィール

笠間 和典(カサマ カズノリ) 笠間 和典(カサマ カズノリ)
【資格】
日本外科学会専門医・指導医
日本内視鏡外科学会技術認定医
日本消化器外科学会認定医
麻酔科標榜医
日本麻酔学会専門医
日本救急医学会専門医
Fellow of American College of Surgeon(FACS)

【略歴】
群馬大学医学部卒業
群馬大学医学部 麻酔・蘇生科
大阪大学特殊救急部
亀田総合病院 外科医長
三省会 堀江病院 外科部長 救急室長
東北大学、滋賀医科大学、群馬大学非常勤講師兼任

【所属学会等】
日本内視鏡外科学会(評議員)
日本外科学会
日本消化器外科学会
日本麻酔学会
日本救急医学会
日本肥満学会
日本肥満症治療学会(評議員)
日本糖尿病学会
米国消化器内視鏡外科学会
米国肥満外科学会
国際肥満外科学会アジア太平洋地区 Executive committee
アジア太平洋肥満外科学会(創立会員)
ポーランド肥満外科・内視鏡外科学会雑誌 編集委員