医療情報サテライト

Vol.37 肥満手術とは? 第1回(全2回)

監修/笠間和典先生
減量手術の手術法



手術は決して美容を目的としたものではなく、肥満に伴う合併疾患を改善して生命予後をよくし、生活の質を向上させるために行うものです。

 この減量手術は、脂肪吸引ではありません。脂肪吸引は、減量効果は数kgですし、術後に合併症を改善することはできません。肥満の外科的治療は、病的肥満による合併症を改善することを目的としています。お断りしておきたいのは、減量手術は大手術であり、決して簡単に安易に行うものではないことです。手術の対象となるのは、今のままだと命にかかわる危険性のある病的肥満の方です。

減量手術は、減量後の体重を最も長く維持でき、他の治療法に失敗した方にも有効です。この手術を受けた方々からは、生活の質の改善、社会的活動の向上、精神的な安定、雇用機会の増加、経済的な改善どの成果があったことが報告されています。


胃を20~30ccの小袋に分けます。その小袋に小腸をつなぎます。食べ物が流れる小腸の途中に、胆汁と膵液が流れるようにもう一方の小腸の端を吻合します。術前の肥満度に応じてその吻合する小腸の長さを変えて、栄養吸収の程度を調節します。

小袋をつくることによって少量の摂取で満腹感をえて食事摂取量を制限するとともに、吸収を悪くすることによってエネルギーの取り込みをさらに少なくします。最近のアメリカ肥満外科学会などではこのバイパス手術がゴールドスタンダードとなってきており、現在アメリカで最も多く行われている減量手術です。

ルーワイ胃バイパス術のメリット

1.1年後に平均で超過体重の77%を減量できます。長期間のフォロー(10~14年)の報告でも超過体重の60%減を維持できています。
2.肥満に関連する合併症(腰痛、関節痛、糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症候群など)の90%以上が改善されました。
3.現在行われている減量手術の中で最も多く行われており、最も古くから行われている手術です。米国で行われている減量手術の約8割はこの方法です。
4.消化吸収を減少するだけの手術に比べ、栄養に関しての障害が少ないとされています。

ルーワイ胃バイパス術のリスク
1.消化吸収を制限する手術なので、鉄やカルシュウム、ビタミンの欠乏が生じるために、これらの内服が必要です。これを怠ると、貧血や骨への障害が生じます。
2.「ダンピング症候群」(胃の切除後に、胃の貯留機能が低下して飲食物が小腸へ急降下してしまう障害)を起こす可能性があります。
3.胃の小袋が大きく引き伸ばされてしまい、充分な効果が得られないことがあります。
4.食事が通る部分の狭窄(狭くなる)が生じることや、吐き気や嘔吐が見られることがあります
5.残っている下方の胃の検査ができなくなるため、もしそこに何か病変が生じても通常の胃内視鏡、バリウム検査では発見できません。新しい小腸内視鏡を用いた方法で残った胃の検査報告はあります。
6.胆道や膵臓の内視鏡的検査ができなくなります
7.手術に関連する全般の危険性(感染、出血、血栓、縫合不全、肺炎、心臓発作、死亡など)があります。


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