医療情報サテライト

Vol.32 下肢静脈瘤とは? 第2回(全2回)

監修/黒崎哲也先生
下肢静脈瘤の診断・治療法(2)


~実際の治療法の例~
脚の付け根で「表在静脈」と「深部静脈」が合流する場所で逆流が認められた場合、基本的にはストリッピング手術を選択します。
それ以外の交通枝の逆流に対しては結紮術を行います。

なるべく皮膚の切り傷を少なくするために、同一静脈上での逆流はストリッピング手術にて処理します。
病院によっては結紮術を多用するところ、硬化療法を多用するところもありますが、できるだけ小さく少ない傷で、再発・残存を少なく、治療回数もできるだけ少なくするには、ストリッピング手術を選択した方が良いでしょう。
ごく一部に存在する静脈瘤やクモの巣状の静脈瘤、手術治療後に残ってしまった静脈瘤に対しては硬化療法を選択します。
手術を希望されない方、まずは少し様子を見てみたい方には圧迫療法をお勧めします。
あくまで保険診療の範囲で、オーソドックスであっても確実で美容的にも配慮した治療を、望むなら、医療機関と十分相談の上、治療法を選択することをお勧めします。

~入院が必要ですか~
結紮術、硬化療法のみの場合は治療当日に帰宅が可能ですが、ストリッピング手術は患者さんの心と体の負担を考え、入院して手術を行うのが一般的です。
日帰り手術ももちろん可能ですが、いろいろな無理を感じたまま日帰り手術をするのは、患者さんにとっても決してメリットはありません。ゆったりと安心して治療をうけていだけるよう、入院して手術を受けるのが望ましいでしょう。

~実際の治療の流れ【例】~
医療機関により異なると思いますが、私の勤務する医療機関を例に取ってご説明します。

1回目外来受診
まず、外来受診していただき、大まかな診断、治療方針を決めます。
手術が必要な場合は、このときに麻酔を含めた手術治療が安全に行えるか判断するために、術前検査を行います(採血、レントゲン検査、心電図、肺活量検査など)。
また、細かい枝を調べるためにCT検査を受けていただくこともあります(予約検査のため、来院当日には撮影できないこともあります)
どのような手術になるのかを説明したパンフレットをお渡ししますので、次回外来受診までによく目を通しておいていただきます。

2回目外来受診
再度外来を受診していただき、術前検査、CT検査の結果を元に、さらに詳しい枝のチェックを行います。
その上で、どのような手術を選択するかなど説明をします(前回お渡ししたパンフレットをお持ちいただきます)。
話を理解していただいたうえで、治療に納得・同意いただければ入院・手術の日程を決定します。

入院当日
手術当日の午前中に入院していただきます。
手術の準備をした上で、午後から手術を行います。
特に問題がなければ手術後の夕方からお食事をしていただきます。歩行なども可能です。

入院翌日
翌朝、手術した脚の状態などをチェックし、問題なければ午前中に退院です。

退院後1回目外来受診
退院後、約1週間後に外来を受診していただきます。
傷の状態のチェックや、残った静脈瘤がないかなどをチェックします。

退院後2回目外来受診
さらに1ヵ月後に外来を受診していただき、最終チェックを行います。
このとき、今後の注意点などもお話させていただきます。
残った静脈瘤があれば、追加治療(硬化療法、場合によっては結紮術)についてお話し、外来で数回、治療を追加します。

今お話させていただいた流れは、あくまでも標準的な例です。
実際には病気の状況・患者さんの希望などを可能な限り取り入れながら、治療を進めていくこととなります。


下肢静脈瘤とは?
第1回
第2回
下肢静脈瘤の診断・治療法(1)
下肢静脈瘤の診断・治療法(2)
黒崎哲也先生プロフィール