[PTに聞く関節ケア(1)]「拘縮(こうしゅく)が起きるとどうなるの?」拘縮予防ケア

介護情報なら安心介護のススメ

介護のミカタあれこれ

介護の現場での取り組みやエピソードを、
介護関連の専門職の方々にお聞きします。

  • ツイート
  • facebookでシェア
  • LINEで送る
  • ツイート
  • facebookでシェア
  • LINEで送る

[PTに聞く関節ケア(1)]「拘縮(こうしゅく)が起きるとどうなるの?」拘縮予防ケア

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

良肢位のポジションを保つことが拘縮(こうしゅく)の予防につながります。体を動かさない生活を続けていると「拘縮(こうしゅく)」という症状が起きることがあります。
拘縮(こうしゅく)とは、関節が固まって動かせなくなった状態のこと。

訪問介護では、拘縮(こうしゅく)に悩むご利用者に出会うことは珍しくありません。
拘縮(こうしゅく)が起きるとご本人がつらいのはもちろん、介護家族の負担も大変なものです。
関節を柔らかく保つことは、在宅介護生活のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を下げないために欠かせないことだと言えるでしょう。

そこで今回から5回にわたって、「関節ケア」をテーマに集中連載します。
セコムケアステーション鎌倉の所長 清莉絵子さんに話を聞きました。

理学療法士の資格を持つ清さんは、人間の体の動きや関節についての知識が豊富。
1回目は、拘縮(こうしゅく)が起きる仕組みや拘縮(こうしゅく)を予防するためのケアなどについてまとめます

● 動かさない関節には拘縮(こうしゅく)が起きる
拘縮(こうしゅく)にはさまざまあります。
・股関節や膝が拘縮(こうしゅく)によって足が開かない
・握りしめたままのかたちで手が拘縮(こうしゅく)する
・全身の関節が拘縮(こうしゅく)して、不自然にねじれた姿勢で動かなくなる

そもそもなぜ拘縮(こうしゅく)が起きるのか。
理学療法士の清さんに聞きます。

理学療法士であり、セコムケアステーション鎌倉の所長でもある清莉絵子さんに「関節ケア」について話を聞きました。「関節を動かさずにいれば、誰でも拘縮(こうしゅく)が起きる可能性があります。
毎日体を動かしていれば、本来は拘縮(こうしゅく)が起きることはありません。
でも意識がない、麻痺があって自分で関節を動かすことができないなどの事情がある場合、拘縮(こうしゅく)のリスクが高まります。
高齢になると関節が固くなりやすく、可動域は狭くなるものです。
数時間でも動かさないと関節周囲の筋や腱が縮み、拘縮(こうしゅく)が始まる可能性があります。
動かさない期間が長くなるほど、拘縮(こうしゅく)が固定されてしまうのです」

一度、拘縮(こうしゅく)が起きると改善するのは難しいもの。
拘縮(こうしゅく)が起これば痛みによって、日常生活を大きく制約されます。

「拘縮(こうしゅく)は関節だけの問題ではなく、関節の周囲にある筋や腱なども縮んで固まってしまっている状態です。
無理に可動域を広げようとすれば痛みがともないますし、筋肉や腱が切れてしまうこともあります。
関節を動かしやすくするリハビリもありますが、元のように動かせるようになるわけではありません。
拘縮(こうしゅく)が起きたら、ご本人の負担にならない範囲で、それ以上拘縮(こうしゅく)が進行しないようケアするのが一般的です」

肩や肘の関節が拘縮(こうしゅく)すれば、袖を通すなどの着替えも苦痛をともないます。
股関節が拘縮(こうしゅく)すれば、おむつ交換もままなりません。
首や腰の関節が拘縮(こうしゅく)すれば、食事に適した姿勢が取りにくくなるので、誤嚥(ごえん)もしやすくなります。

すべての動作は「スムーズな関節の動き」なくしては成り立たないということ。
拘縮(こうしゅく)が起きる前に関節をケアすることが大切です。


● 拘縮(こうしゅく)を予防する関節ケア
高齢になれば、ある程度関節の可動域が狭まることは避けられません。
それでも、できるだけ可動域を狭めない努力は必要です。

拘縮(こうしゅく)が起きてしまうと介護のプロでも介助の難度があがります。
廃用症候群やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の低下を防ぐためにも、関節が動くうちに拘縮(こうしゅく)予防を習慣にしたいものです。

清さんに日常でできる拘縮(こうしゅく)予防ケアを聞きました。

「関節を動かすことが、何よりの拘縮(こうしゅく)予防になります。
日中はベッドで横になる時間を少なくして、できるだけ体を動かす。
つかまり立ちをする、車いすに移乗するなどの動作も、たくさん関節を使っています。
麻痺がある場合は、人の手を借りて、自力で動かせない関節を動かすことが大事です。
片麻痺の方なら、麻痺のないほうの手で手伝いながら関節の曲げ伸ばしをしてみてください。
1日●回のように回数を決めると大変だと思いますので、思い出したタイミングで少しでも関節を動かす意識を持つと良いと思います」

長期入院中の方や、寝たきりの方の場合は、どうしたら良いのでしょうか。

「ご家族のケアだけでは、関節の拘縮(こうしゅく)を回避することが難しい場合もあると思います。
それでも、できる範囲で関節を動かしてあげることが大事。
安静が必要でも、ご本人に意識がなくても、医師から禁じられない限りは専門家に指導してもらいながら関節を動かしてあげましょう。
ベッド上でも、できることはいろいろあります。
肘や膝を曲げ伸ばしする。足首や手首を回す。手足の指をマッサージするなど。
一日数回でも続けることが、関節が固まりきることを防いでくれるはずです」


● 介護負担を軽減する「良肢位」とは
拘縮(こうしゅく)は「予防」が何より大事。
それでも拘縮(こうしゅく)が起きてしまったときは、どのように対処すれば良いのでしょうか。

「拘縮(こうしゅく)を進行させないためには、良肢位のポジショニングを保つことが大切です。
具体的には、肘や膝が軽く曲がっていて、腕は脇につきすぎず軽く開いた状態。
足も閉じておらず軽く開いた状態ですね。
頭も軽くあごを引いたくらいの角度になると良いと思います。
クッションなどを挟んで良肢位のポジショニングを保ちましょう。
クッションと体の間に隙間ができないようにするのがポイントです」

良肢位とは、自分で関節を動かせない人が日常生活を過ごしやすく、ご本人も快適な体位のこと。
体位変換をするときも、良肢位を意識して体勢を整えることがポイントです。

「関節をどれくらいの角度で保てば良いのかは、その方の体の状態によっても異なります。
訪問リハビリの理学療法士や訪問看護師に相談すると、良肢位のつくり方やコツを教えてもらえるはずですよ」

拘縮(こうしゅく)は介護するご家族にとっても負担がかかることですので、専門家の知識と協力は不可欠。

麻痺や寝たきりの方を自宅で介護しているなら、早めに「拘縮(こうしゅく)予防」について相談しておきましょう。
拘縮(こうしゅく)が起きてしまってからでも、介護負担を減らせる方法をアドバイスしてくれるはずです。


【あわせて読みたい!関連コラム】
関節が固まるのを防ぎ、適切な角度を保つために
良肢位について、部位別に詳しく解説しています。
拘縮(こうしゅく)予防についても紹介していますので、あわせてご参考に!

在宅介護で大切にしたい「起きる」「座る」「立つ」
関節を動さかない生活は、拘縮(こうしゅく)だけではなく廃用症候群をまねく可能性も。
日常でできる予防策をまとめました。

セコムの介護応援ブログTOPへ