在宅介護で「食べる力」を維持・回復させる方法

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在宅介護で「食べる力」を維持・回復させる方法

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

話すこと、歌うこと、体を動かすことで口の動きが鍛えられるものです。誤嚥(ごえん)のリスクを回避するには介助の工夫も必要ですが、本人の「食べる力」は重要です。
「噛む力」や「飲み込む力」を維持、あるいは回復する努力が欠かせません。

食べるという行為は本来、心豊かで楽しいことです。
誤嚥(ごえん)の不安を抱えながらでは、介護する人も介護される人も食事が不安と緊張をともなう時間になってしまいますね。

在宅介護、在宅療養中でも、「食べる力」を高めるためにできることはいろいろあります。

● よく噛むほど「食べる力」が目覚める
誤嚥(ごえん)のリスクがある要介護の方は、ペースト食や刻み食など柔らかく飲み込みやすい形状の食事を摂ることがあります。
高齢者に食べやすい食事と思われがちですが、調理の工夫だけで誤嚥(ごえん)のリスクが減らせるわけではありません。

大事なポイントは、よく噛むこと。
噛むという行為は、食べ物を細かく砕き、唾液と混ぜあわせて飲み込みやすいかたまりを形成する、いわば飲み込む前の準備段階です。

「咀嚼(そしゃく)」は、あごや頬の筋肉を使ったリズム運動で、その動きはこめかみや喉の筋肉などさまざまなところに波及しています。
この運動によって唾液の分泌が増加します。
胃や腸も刺激を受けて活発に動きはじめるなど、噛むことで食べるための身体の機能にスイッチが入るのです。

ペースト食や刻み食ではあまり噛む必要がありません。
噛む行為が省略されて身体の「食べる準備」が整わないままでは、誤嚥(ごえん)のリスクも高まります。
そればかりか、認知機能や運動機能に衰えが生じることさえあるのです。

病院では消化器系の手術をした患者さんに、「水でも噛んで」ということがあります。
開腹手術をした直後は胃や腸が動きにくいので、噛むことで刺激を与えて消化管の機能を呼び覚ます狙いです。
噛むことがいかに大事な役割を果たしているかよくわかりますね。

歯茎でつぶせるくらい柔らかく仕上げた食事でも、「噛む」ことは大切。
噛めば噛むほど唾液の分泌が促されて飲み込みがスムーズになりますので、誤嚥(ごえん)の心配がある方ほどしっかり噛むことを心がけましょう。


● 「食べる力」を鍛える練習方法
ガム、噛みごたえのあるビーフジャーキーやスルメなどで、噛む練習をするのもおすすめです。
頬や舌などを使うので、口腔(こうくう)内の動きも鍛えられます。
嚥下(えんげ)機能に不安がある方は、飲み込まずによく噛んで唾液の分泌を促すだけでも十分です。
誤嚥(ごえん)しないよう、食べるときの姿勢にも注意しながら見守りましょう。

口を動かす運動のひとつに「話すこと」があげられます。
家族と話すのも大切ですが、外出していろいろな人とおしゃべりしたほうが良いでしょう。
きっと、だんだん口の動きがスムーズになるのを感じられると思います。

デイサービスのレクリエーションで歌ったり、踊ったりするのも良いことです。
肺が広がって空気をたくさん取り込めるので、全身がいきいきして食欲もわいてくるかもしれません。家で閉じこもってじっとしていたら、食欲もわかず食べる力もどんどん衰えてしまいます。

おいしく、安全に食べる力をつけるためにも、口と身体をたくさん動かしてみてくださいね。


● 「口の中」のチェックで体調がわかる?
在宅介護では、日々の体調管理が欠かせません。
体温や血圧、脈拍などを毎日チェックしている介護家族も多いでしょう。
健康管理に口の中の様子を見ることもぜひ加えてみてください。

口が十分に開くか、舌がよく動くか、唾液が出ているかなど。
毎日チェックしていると、その日の体調によって口の中の様子が異なることに気づくと思います。

口や舌の動きがあまりよくない、唾液が少なく口の中か乾きぎみといったときは、誤嚥(ごえん)のリスクが高いとき。
ひと口の量を少なくしてよく噛んでもらう、食べ物と水分やゼリーを交互に摂ってもらうなど、慎重に介助しましょう。

「食べる力」を高めるために何より大切なのは、食事を楽しむ気持ち。
シャキシャキ、パリパリ、ホクホクなど、食べ物にはいろいろな食感があり、歯ごたえや弾力もおいしいと感じる要素のひとつです。
「食べる力」を鍛えて、体調に合わせていろいろな食事を楽しめると良いですね。


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