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誤嚥(ごえん)性肺炎と食事介助の注意点

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

誤嚥(ごえん)予防の基本は、食事中の姿勢です。食事介助は、在宅介護でもっとも時間がかかることのひとつ。
慎重に介助しないと、いつ誤嚥(ごえん)するかわかりません。
特に誤嚥(ごえん)性肺炎を何度も繰り返す方の食事介助では介護家族の負担は大きいものです。

食べられなければ、栄養や水分が不足して命にかかわるかもしれない。
無理して食べさせたら、また誤嚥(ごえん)性肺炎になってしまうかもしれない。

食事介助の不安は尽きないと思います。
今回は、誤嚥(ごえん)性肺炎を繰り返す人の食事介助について注意点をまとめます。

● 誤嚥(ごえん)のリスクを防ぐ「食事の姿勢」をおさらい
誤嚥(ごえん)予防の基本は、食事のときの姿勢です。

椅子に座りしっかりと両足を床につけた「椅坐位(きざい)」が理想ですが、寝たきり状態の方もベッドの頭側をギャッジアップ(ベッドの背部を上げて調整すること)して、飲み込みやすい姿勢を整えることが大切。

頭が後ろに倒れていると、あごや舌の動きが制約されるので、食塊を飲み込みにくくなります。
上体をしっかりと起こし、ほんの少し顔がうつむき加減になる姿勢を取れればベストです。
ご自身で姿勢を保つのが難しい場合は、頭の後ろにクッションや枕を挟んで頭の角度を調整してくださいね。

介助者は、本人の前方に位置取りし、目線の高さが同じくらいになるように座ります。
立ったままなど高い位置から食事介助すると、本人の顔が上向きになり誤嚥(ごえん)しやすくなりますので注意しましょう。
その方にあった姿勢の調整は意外と難しいもの。
摂食嚥下(えんげ)の知識のある医師や看護師、言語聴覚士などに相談するのもよいでしょう。

介助する方も、される方も、リラックスした気持ちで食事と向き合うことが大切です。
テレビやラジオなどは消して、なるべく食べることだけに集中できるようにしたほうが良いでしょう。

正しい食事介助をおこなっていても誤嚥(ごえん)を繰り返す場合は、嚥下(えんげ)機能の状態をきちんと把握したほうが良いかもしれません。
ペースト、刻みなどの食形状や、スプーンの工夫など、本人にあった食事の方法を見つけましょう。
言語聴覚士や理学療法士など専門職によるリハビリで、嚥下(えんげ)機能が改善することもあります。


● 食事の「ドクターストップ」はどこかを把握する
どんなに時間をかけて丁寧に食事介助をしていても、その日の体調しだいで食べられないこともあります。
体調が良くないときは咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)の機能が低下して誤嚥(ごえん)のリスクが高まるので、なかなか飲み込めない、本人がつらそうというときは、無理をすべきではありません。

誤嚥(ごえん)性肺炎を繰り返す方は特に、「なんとか食べさせなくては」と介助者考えすぎないようにしましょう。

「食事を控えて様子見」して良いときと、「医療介入が必要」なときの見極めは、ご家族がする必要があります。
かかりつけ医や訪問看護師などに、食事について相談しておくことが欠かせません。
本人の今の身体状態をよくわかっている専門家から、家族としてのどう対処すべきかをしっかり聞いておくことをおすすめします。

家での食事の様子を具体的に伝えると、誤嚥(ごえん)性肺炎のリスクと命をつなぐために必要な栄養のバランスを考えて、アドバイスをしてもらえるはずです。
日ごろから心配に感じることをメモしておくと良いでしょう。


● 食べられなくても「水分」だけはキープする
高齢者にとって、水分不足は大敵。
食べることに苦労するほど体力が衰えている要介護者はなおのこと。
筋肉量が減って水分を蓄えることができなくなっているため、水分摂取がほんの少し足りないだけで脱水症状を引き起こすことがあります。

食事が摂れないときも、水分摂取だけは欠かさないようにし、意識的に多く摂ってもらいましょう。
高齢者に必要な水分摂取量は1日1000ml~1500ml。
元気なときなら、食事からも水分を補っています。
食べられないときは、いつも飲んでいる量の水分だけでは不十分です。

できれば経口補水液など効果的に水分摂取ができる飲み物が望ましいですが、それすら誤嚥(ごえん)のリスクがあることは否めません。
本人が欲していないのに無理に飲んでもらおうとすると、飲み込むための体の準備が整わず、さらに誤嚥(ごえん)のリスクが高まる可能性もあります。

飲み物以外でも、果物やアイスクリーム、ゼリーなど、水分が豊富な食べものもおすすめ。
「おいしい」と感じられるものなら、体も受け付けやすくなるはずです。最近は、経口補水液がゼリー化されパウチになったものも市販されています。冷やせば口当たりも良く、摂取しやすいと思います。冷たいものは嚥下(えんげ)反射を刺激するという効果もあります。
栄養バランスやカロリーにこだわらず、好むもの、欲しがるものを、何でも良いから口にしてもらうようにしましょう。

ただし、誤嚥(ごえん)性肺炎を繰り返す方の場合、家族ががんばるだけでは限界があります。
飲み物もうまく飲めない、好物も口にできないときは、早めに医師に連絡してください。
不足した水分を点滴してもらうだけでも、体調が改善することもあります。
最近では摂食嚥下(えんげ)の専門家が増えています。口から食べることを支えるためにどうしたら良いか、一緒に考えてもらいましょう。

誤嚥(ごえん)性肺炎を繰り返す場合の食事介助では、身体状態と日ごとの体調変化を見極めながら臨機応変に対応することが大切。
あまりにも食事介助が大変でつらいなら、ひとりで抱え込む必要はありません。
在宅介護を支えてくれるケアマネジャーやヘルパーにもどんどん相談して、力と知恵を貸してもらってくださいね。


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