先日、電柱や雨どいを使って、住宅に侵入して盗みを繰り返した、元スタントマンが捕まったという報道がありました。手をかける場所さえあれば、腕力だけでのぼることができるといいますから、２階であっても施錠を忘れることのないようにしていただきたいと思います。
　住宅侵入盗といえば、最近の侵入手口は無施錠箇所からの侵入です。戸建ての場合は、２階のベランダの窓の鍵がかかっていないご家庭も少なくないといいます。マンションの高層階にお住まいの方も同じような状態ではないでしょうか。
　主要な侵入手口については、以前「住宅を狙ったドロボウはどこをどうやって入る？」で書かせていただきましたので、そちらをお読みいただければと思いますが、今回は、かつて流行ったピッキングやサムターン回しの現状について見直しておきたいと思います。

この10年で100分の1以下になったピッキングによる侵入
　そもそもピッキングは、鍵を忘れてしまったり、なくしてしまったりした場合などに、鍵屋さんが特殊なツールを用いて開錠するサービスです。ところが、このツールをドロボウが悪用して侵入する手口が流行りました。警察庁が統計を取り始めたのは2000年からですが、その年の認知件数は２万9211件にものぼりました。しかし、最近はほとんど使われることのない手口となっています。昨年2013年では、わずか28件となっています。
　また、サムターン回しについては、ドアにドリルで穴を開けたり、ドアの隙間を使ったりして、特殊なツールを差し込み、室内側のサムターンと呼ばれるつまみを回す手口です。2013年には234件にまで減っています。
　右図は、警察庁が統計を取り始めてからの件数の推移です。ピッキングについては、この10年で100分の１程度に、サムターン回しについては10分の１程度になっています。

ハード対策と法の整備で減少に
　これらの手口が減ったのは、皆さんの防犯意識の向上があります。耐ピッキング性能の高いシリンダーへの交換や、サムターン回し対策を行っていただいたことで、この手口が通用しなくなってきたことが効いています。また、2003年に施行された「特殊開錠用具の所持の禁止に関する法律」通称ピッキング法も、この手口の抑え込みに効いたといえます。
　このように、ハード的な改良が進んだり、取り締まる法を整備したりすることで抑え込みに成功しました。しかし、いまだに件数がゼロにはなっていません。街を歩くと、ピッキングに弱いシリンダーを使われている玄関ドアは少なくありません。

防犯対策の再確認を
　ピッキングに弱いタイプのシリンダー錠をお使いの方は、交換されることをお勧めします。対象となるタイプはいくつかありますが、一番多いのは鍵穴の形状が"くの字"になっているディスクシリンダー錠と呼ばれるものです。交換と言っても、ドア全体を取り換えるわけではなく、シリンダー部分だけの交換で済みます。お近くの鍵屋さんに相談されることをお勧めします。
　なお、ピッキングやサムターン回しといった侵入手口は、ドロボウにとっては手間のかかる「作業」をともないます。それよりも、無施錠箇所を見つけて侵入した方がはるかに"お手軽"なのです。近頃、ピッキングなどが下火になっているのは、そのような"お手軽"に侵入できる無施錠箇所が見つけやすいためなのかもしれません。仮に、無施錠箇所が見つけられない状況になったとしたら、ピッキングによって玄関から侵入されるケースが増えてくるかもしれません。
　「うちは大丈夫」と高をくくらないで、ピッキング対策とサムターン回し対策についても考えておいてください。


【関連情報　ｐｉｃｋ ｕｐ！】
・データから読む「住宅を狙ったドロボウはどこをどうやって入る？」

・セコム防犯・防災用語集「ピッキング」「サムターン回し」

・セコム防犯・防災用語集「ピッキング防止法」

セコムＩＳ研究所
リスクマネジメントグループ
濱田宏彰