夏の名残の残暑もようやくおさまり、秋が本格化してきました。秋というと「文化の秋」「スポーツの秋」です。学校などでは文化祭や運動会が開催される季節。筆者も、手軽なレジャーとして、週末は子どもと一緒にいろいろな学校の文化祭を見させてもらっています。

　学校の文化祭では、定例の模擬店や、おばけ屋敷などに加え、最近人気の「からくり連鎖装置（ピタゴラ装置）」や、テーブルマジック、科学系クラブの実験デモンストレーションなど、学校ごとに工夫された多様な展示やパフォーマンスもありました。中には本当に手の込んだものもあり、びっくりしましたが、一方で多少気になったこともありました。

　文化祭では、通路にガムテープで電源のケーブルが貼り付けてあったり、通常の照明器具に色セロファンをかぶせて照明の演出をしていたり、また外から空気を送って膨らませるビニール製の手作りの密閉されたドーム内に人を入れて、配線が露出した手作りのプラネタリウムを上映していたなどの風景がたくさんありました。

　ガムテープで通路に貼られた電源ケーブルは、そこを通る人々に踏まれ確実に劣化していきます。照明器具に被された色セロファンの内側では相当の熱がこもっていることでしょう。また、配線が露出した手作りプラネタリウムからもし火が出たら、ビニール製の真っ暗な閉じたドーム内で星を見ている人々はパニックになるかもしれません。

　文化祭では、生徒さんたちが手作りで仮設した、展示や演出のためのさまざまな大道具や小道具があり、そこでなんらかの事故が起こるリスクは、通常よりも相当高いと言えます。また、来場者の規模が数万人にも及んで、まるで人気のあるテーマパークの休日のような感じで校舎の中が人であふれ、ここで何かあったら相当まずいことになるだろうと感じさせられる学校もありました。

　展示やパフォーマンスを行う生徒さんたちは、自分たちの展示やパフォーマンスに手いっぱいで、そこで事故が発生することにまで気が回らないのは無理ないでしょう。文化祭では、その準備ができた段階で、大人が事故発生のリスクを見て回り、必要に応じて指導を行って、そのリスクを低減させる必要があるのではないかと思います。

　文化祭を、自主性を培う教育の機会と捉え、生徒さんたちにその企画や運営を任せてしまう学校も多いかと思いますが、事故防止の観点に立つと話は別。今回のコラムでは、生徒さんたちが立てた文化祭のさまざまな企画や展示に対して、「もしそこで事故が発生したら」という観点で、先生や親などの関係する大人が目を通し、必要に応じて指導を行うことを提言させていただきます。

　学校の文化祭でも、食品を扱う模擬店では、過去に事故が発生した苦い経験もあり、各自治体や保健所などが、扱う食品などに関してのガイドラインを示して必要に応じて指導なども行っています。また、学校側でも、相当の注意を払って食中毒を発生させないように気を使っている様子が見て取れます。

　社会一般では、テーマパークや、大規模小売店などの不特定多数の人間が集まる施設に対して、事故防止の観点から相当厳しいルールが設定されて、監査が行われるのが普通です。学校においても、文化祭などの多くの不特定多数の人が集まる行事では、食品を扱う模擬店に留まらず、一般の展示やパフォーマンスに対しても、リスクマネジメントの目で見直してみる必要があるのではないかと思います。




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甘利康文