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Vol.67 外反母趾 通勤はスニーカで 第1回(全2回)

 
外反母趾 通勤はスニーカで
 
外反母趾 通勤はスニーカで
 
A. 外反母趾とは、足の親指が小指側に変形し、「くの字」になった状態をいいます。
 一般的な症状としては、親指付け根の内側の飛び出た部分が靴に当たり、腫れや痛み、しびれを生じたリ、歩くときに負担がかかる人差し指、小指の足裏の付け根にタコができる、などがあります。また、足の変形で筋力のバランスが崩れ、歩きにくく疲れやすいといった症状も出やすくなります。
 さらに進行すると、親指が隣の指の下に入り込み、その指の付け根の関節を脱臼させてしまうこともあり、最終的には、骨や関節を矯正するための手術が必要になることがあります。
 
外反母趾 通勤はスニーカで
 
A. 確かに外反母趾になる人の約9割は女性です。男性にくらべ筋力が弱く、関節が柔らかいことを考えると、そもそも女性に起りやすい病気と言えるでしょう。しかし、外的要因の大半は、やはり足に合わない靴にあります。とくに、若い女性が好んで履く、ヒールが高く先の細いハイヒールは最大の要因と言えます。
 ハイヒールを履くと、足底にかかる体重は足の前部に集中します。裸足の場合にくらべ、4cm のヒールを履いた場合は約1.5倍、さらに9cm になると約3 倍もの重さが足の前部にかかることになります。その結果、足は横に広がるのですが、ハイヒールの先は細くなっているため、親指は付け根で外に向かって、くの字に曲げられます。逆に小指は内側に変形していき、これを内反小趾と呼んでいます。外反母趾の人は、この内反小趾を併発している場合も多いのです。
外反母趾 通勤はスニーカで

 そのほかの要因としては、現代の日本人の生活習慣の変化にあるとも考えられます。靴を履く時間が増えて、裸足になる時間が減る、乗り物の利用が増えて、自分の足で歩く機会が減ったことで、今の日本人の足の筋力は、どんどん低下する傾向にあります。
 足には、本来、土踏まずを形成する縦のアーチと、足の甲の膨らみを形成する横のアーチがあり、歩いたり走ったりするとき、地面からの衝撃を吸収するクッションの役目や、地面を蹴り返すバネの役目を担っています。しかし、足の筋力が低下すると、この縦横のアーチがなくなってしまい、扁平足や横幅の広い足になっていきます。これが、外反母趾を生む要因のひとつにもなっているのです。
 
 
外反母趾 通勤はスニーカで
 
外反母趾 通勤はスニーカで
 
A. 外反母趾 通勤はスニーカでまずは、ハイヒールをなるべく履かないこと。履くにしても3cm 以内であれば、まだ許容範囲だと思います。
 仕事などの都合で、どうしても履かなければいけない方は、通勤の行き帰りだけでもスニーカーなど、足に負担がかかりにくい靴を履くようにしてください。また、デスクワークの際も、楽な靴やサンダルに履き替えることをおすすめします。(次回は、運動療法をご紹介します。)
 

外反母趾 通勤はスニーカで
第1回
第2回

【監修】岩本柾澄(いわもと・まさきよ)
医療法人社団誠馨会 セコメディック病院 整形外科医長
1996年に山梨医科大学を卒業し、同年東京大学医学部整形外科教室入局。
11年間、さまざまな関連病院で勤務し、三井記念病院を経て現職。そのほか、日本整形外科学会専門医/日本整形外科学会脊椎脊髄病医/日本医師会認定産業医。