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Vol.64 正しい知識で、すこやかダイエット 第2回(全2回)

Vol.64
監修/笠間和典先生
 
正しい知識で、すこやかダイエット
 
正しい知識で、すこやかダイエット
 
A.  私たちのクリニックで行っているのは、脂肪吸引のような美容目的の手術ではありません。重症肥満という「病気」を治療し、糖尿病などの合併症を改善して、患者さんに明るい人生を送っていただくための手術です。
 減量手術は、アメリカでは1950年代から行われており、現在では年間23万件、世界中では35万件も行われています。
 日本では、1980年代から行われ始めました。しかし、当時は開腹手術が主だったので、キズに関連した合併症も多く、患者さんの社会復帰にも時間がかかりました。それが、1994年よりアメリカで腹腔鏡下手術が始まり、2000年を超えてから件数も飛躍的に伸びています。
 
正しい知識で、すこやかダイエット
 
A. 正しい知識で、すこやかダイエット手術は、お腹の中に細いカメラを入れて、そのカメラを通した映像をモニターテレビに映し、医師がそのモニターを見ながら、細長い鉗子といわれる器具を用いて行います。技術としては、非常に高度なものが要求されます。
 世界中でいちばんよく行われているのが、「腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術」という手術で、胃を小さな袋に分け、その袋を小腸につなぐ手術です。これによって、少量の食事で満腹感が得られ、食事の量が制限されるとともに、栄養の吸収を減少し、カロリーの取り込みを少なくする効果があります。
 手術時間は、たとえば私が行う場合、かなり複雑な手術でも2時間はかからないと思います。通常、翌日には流動食による食事も開始し、その次の日には退院していただくことができます。キズも1cm程度のものが数ヵ所できるだけですので、ほとんど目立ちません。
 
正しい知識で、すこやかダイエット
 
正しい知識で、すこやかダイエット
 
A.  手術後、すぐに体重が落ちるわけではありません。しかし、1ヵ月もすれば、大体10kgくらいは落ちてきます。私のクリニックで減量手術を受ける方の体重は110~120kgくらいが多いのですが、1年で平均45kgくらいは落ちていますね。BMIで25くらいになります。
 もうひとつ注目に値するのは、糖尿病が非常に高い確率で治癒、もしくは改善されることです。その理由は、先のバイパス手術により、消化管から分泌されるGLP-1というホルモンが出やすくなるためだと考えられます。GLP-1は、新しい糖尿病の治療薬として大きな注目を集めています。そのほかにも、高血圧や高脂血症など、既存の内科治療では、現状維持をゴールに置いていた疾患にも大きな効果をあげています。
 
正しい知識で、すこやかダイエット
 
A. 正しい知識で、すこやかダイエット その通りです。肥満は、手術で胃を小さくしただけで解消できるものではありません。手術後には手術後に適した栄養管理が不可欠ですし、運動療法も重要です。また、痩せたことにより、患者さんを取り巻くさまざまな社会的環境、生活環境も変わってきますので、精神面でのサポートも欠かせません。
 そこで私たちのクリニックでは、外科医である私とソーシャルワーカー、管理栄養士が中心となって、サポートチームをつくり、長時間にわたり患者さんのフォローを行っています。
 手術を受けられた方のなかには「生まれ変わった」「もっと早く手術を受ければよかった」とおっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。重度の肥満や肥満による合併症で悩んでいる方は、選択肢のひとつとして、減量手術をご検討ください。

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