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手術をしないで治療をするというのはまだ実験段階で、手術が可能であれば手術をします。そして患者さんの年齢や乳がんの性質、病期(症状の進み具合)に応じて、再発や転移を防ぐために、放射線を照射したり、抗がん剤やホルモンを投与したりします。
近年は、病期が2期以上の人に対しては、抗がん剤治療をして病期を下げてから手術をするのが一般的になっています。これ(「術前化学療法」)を行う目的は二つあります。
一つは、しこりを含む乳房の一部を切除する「乳房温存療法」が難しい場合、抗がん剤治療によってしこりを小さくしてから温存療法ができるようにすることです。
もう一つは、抗がん剤の効果を調べることです。抗がん剤が効く人はしこりがなくなったり、再発・転移しにくいのでいいのですが、効かない人は放っておくと、手術をしても再発したり転移したりするので、早め早めに治療していく必要があります。このリスクの高い人を早めに選別するために行うわけです。
このように、「術前化学療法」は、単にしこりを小さくして部分的な手術を可能にするだけでなく、患者さんを乳がんで死亡させないための手段、診断も含めた治療法なのです。
なお、乳がんにはホルモンに敏感なタイプとそうではないタイプがあり、前者の場合はホルモン療法によってがんの発育や増殖を抑えることができるので、「術前薬物療法(術前ホルモン治療)」として積極的に行います。ただし、乳がんは手術をしてから本格的な治療が始まると言われており、ホルモン療法は最短でも5年間は続ける必要があります。
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「乳がんにならない生活習慣はないのか」とよく聞かれますが、残念ながらありません。 ただし、遺伝性乳がんに関しては80~90%という高い確率で乳がんになることが分かっているため、発症する前に両方の乳房を切除することがあります。日本では倫理的に認められていませんが欧米では頻繁に行われています。
しかしその場合でも充分なカウンセリングなどが必要です。
また、閉経後に太った人は乳がんになる確率が高くなるので、 太らないことが予防法になります。
しかし、それ以外では決定的な予防法、つまり一次予防がないだけに、二次予防としての検診が重要になるのです。
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乳がん対策のポイントは早期発見・早期治療に尽きます。恥ずかしい、痛そうだ、忙しくて時間がないなどと言わないで、検診を受けていただきたいと思います。早い段階にがんが見つかれば手術と放射線療法で90数%の人が治ります。
それと、先ほど言いましたように、健康・医療に関する情報が氾濫していますが、その情報を自分の都合のよいように解釈することは止めた方がいいでしょう。繰り返しになりますが、予防のために年に1回は検診を、気になったらすぐ検診を、と申し上げたいですね。
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