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Vol.47 COPD(慢性閉塞性肺疾患)第1回(全2回)

監修/木田厚瑞先生
「COPD」
 
「COPD」
 
 完全禁煙にします。そのために、ニコチンパッチやニコチンガムなどのニコチン代替療法を行い、並行して喫煙依存の生活習慣を変えさせる禁煙教育を徹底して行います。
 次いで薬物治療と非薬物治療を行います。薬物治療は、息切れなどの苦しい症状の緩和を目的に行うもので、気管支拡張薬が中心となります。即効性の高い短時間作用型の薬と、症状を管理する長時間作用型の薬を症状に合わせて使います。
 具体的には、抗コリン薬、β2刺激薬などの吸入薬を使います。吸入ステロイド薬はQOLの低下してきた人や急性増悪を繰り返している人だけに使いますが、効果がない場合はテオフィリン製剤という内服薬を使います。さらに呼吸機能が著しく低下し、血中の酸素が不足になってきたら酸素療法を行います。
 非薬物治療で特に重要なのは運動と栄養です。この病気は息苦しいから動けない。動けないから足腰が弱り、さらに筋力が衰える。そして外へ出られなくなるという悪循環をたどります。ですからこの病気には安静が悪いわけです。そこで、運動療法の第一は歩くことです。
 私たちのところでは酸素吸入をしている人でも1日5,000歩歩くように指導しています。栄養については、一番の問題は痩せることです。痩せると予後が悪くなるので、極力痩せさせないこと。そのために、栄養士が食事指導をします。
 また、残っている呼吸機能を最大限に生かすためのトレーニングである呼吸理学療法も効果があります。たとえば、腹式呼吸のやり方を教える。寝た状態でやっても意味がないので、座った状態、立っている状態でのやり方を指導します。
 また、口すぼめ呼吸、息苦しいとき笛を吹くような呼吸をする人がいますが、その呼吸の仕方を教えることで日常生活が楽になります。それと、一番苦しいとき、たとえば明け方や布団を敷くとき、あるいは入浴時に苦しくなるような対応の仕方を教えます。そういうきめ細かい教育指導が大事です。
 このように、COPDは、禁煙に始まり、薬の使い方、酸素療法、運動療法、栄養管理、呼吸理学療法のすべてを教えなければならないし、治療しなければならない。そこで、私たちはこの治療法を「包括的な呼吸リハビリテーション」と呼んでいます。
 
「COPD」
 
 COPDは悲観的な病気ではありません。
 昔は慢性気管支炎や肺気腫は治らないと言われていましたが、今は医療技術の進歩によって治療でき、その結果、多少息切れがあってもふつうに生活ができ、旅行にも行けるというレベルまで回復します。特に寝たきりにさせないで、いつまでもアクティビティを保たせることが重要です。そのためには、早期発見・早期治療をして、急性増悪にさせないで、合併症を防ぐというのが私たちの基本的な考えです。
 COPDという病気は指導し治療すれば確実に改善する。ですから非常にやりがいがあります。
 


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