医療情報サテライト

Vol.43 冠動脈疾患 第2回(全3回)

監修/中村淳先生
冠動脈疾患について
★注意したい3つのポイント
 今回は、冠動脈疾患についてあまり知られていないことで、知っていただきたいこと、注意していただきたいことを、ご紹介します。

POINT① 症状がないのは病気が存在しないということではない。
       症状が軽いのは病状が軽いということではない。


 症状は身体から出るサイレン(警報)です。たとえば、ここ(胸)が痛いとします。
 ここに何か疾患があるわけではないのです。中の心臓が病んでいるから痛いのではなく、この辺りが危ないという信号を脳が出しているのです。こういう痛みを関連痛といいます。ただ、こうした症状が出ない人がたくさんいます。冠動脈疾患でいえば、痛みとか息切れとかの症状が出ない人はほぼ半数にもなります。
 皆さん病院には行きたくないですよね。
 でも、症状があれば怖いからすぐ病院に来られます。つまり病状の進行と症状の進行が並行するのであれば、心臓の病気で病院に運び込まれることはないはずです。しかし、実際には救急車で運び込まれる人が多い。なぜか?突然具合が悪くなるからです。ですから、症状がないのはイコール病気が存在しないということではないこと、病状の進行と症状の進行は必ずしも並行するわけではないことを知っていただきたい。
 また、患者さんの中には「検査で狭心症といわれたけど、症状が軽いからそんなに悪いとは思わない。だから、治療は待ってください」といわれる方がいます。しかし、症状が軽いので自分では大丈夫だろうと思っていて突然具合が悪くなり、救急車で運ばれるケースがあります。ですから、症状が軽いから病状も軽いわけではないこと、症状の軽さ重さは病状の軽さと重さと必ずしも並行しないことを知っていただきたい。特に冠動脈疾患についてはこのことに注意する必要があります。

POINT② 今や医療技術の進歩で冠動脈疾患は治せる。
       だから重症といわれても諦めることはない。


 実は心臓がガンになることはほとんどありません。神様は人間の身体の中でも特に大事な臓器がガンに冒されるような組織にはつくっていないのです。これは何を意味しているかというと、心臓・血管の病気はガンのように転移したら手の施しようがない、命が助からないという病気ではないということです。動脈硬化で血管がガタガタになっても何らかの物理的手法で治せるということです。しかも、今は、胸を開いて手術をしなくても、カテーテル治療という侵襲の低い治療法でかなりのパーセンテージの方々を治せる。
 私どもの病院では狭心症単独の病気の方に「冠動脈バイパス手術(CABG)」をすることはほとんどなく、多くはカテーテルを用いた「冠動脈形成術治療(PCI)」を行っています。今はそういう時代になってきたのです。
 繰り返しますが、冠動脈疾患はCABG にしろPCI にしろ、卓越した技術があればほとんど治すことができる、そういうレベルに達しています。ですから、病院で重症と診断されても落ち込んだり諦めたりしないで、セカンドオピニオン、サードオピニオンを受けていただきたい。そして、優れた技術を持った病院を探して、受診していただきたい。とにかく、駄目と言われても駄目ではないことを覚えておいてください。

※ 3つ目は、次回掲載予定です。


冠動脈疾患
第1回
第2回
第3回
注意したい3つのポイント
中村淳先生プロフィール

中村 淳(なかむら すなお)
中村 淳(なかむら すなお) 中村 淳(なかむら すなお)
医療法人社団 三記東鳳
新東京病院
副院長兼心臓血管センター長
医学博士

【略歴】
大分医科大学医学部卒業
熊本大学医学部循環器内科入局
福岡徳洲会病院循環器内科入局
福岡徳洲会病院循環器科医長
ハートライフ病院循環器科医長
沖縄南部徳洲会病院循環器科医長
沖縄南部徳洲会病院循環器科部長
新東京病院循環器科部長
インドネシア、タイの病院の顧問医師
新東京病院副院長兼心臓血管センター長

【所属学会等】
熊本大学大学院非常勤講師
日本心血管インターベーション学会認定医・指導医・評議員
日本心血管カテーテル治療学会認定医・指導医・評議員