ヒトの一生において、40歳代後半から60歳代にかけて起きる様々な身体の不調を示す病態に「更年期障害」という言葉があります。
最近では女性だけでなく、男性にも更年期があるということが認識されてきましたが、日本の医学界の中では、更年期は性ホルモン(女性ホルモン、男性ホルモン)の低下に伴う諸症状ということで、片付けられている側面が大きいように思われます。
しかし、この年代には、性ホルモンの低下だけではなく、その他多くのホルモンの変化が生じ、それに伴って血管の老化(動脈硬化)、骨の老化(骨粗しょう症)、血液の老化(酸化物質=「活性酸素」の増加)、筋肉の老化(運動能力の低下)、脳の老化(記憶力、判断力、集中力などの低下)が起ってきます。
中高年を悩ます「メタボリック・シンドローム(以下MS)」という病態が最近注目されています。
これは内臓脂肪が増加することにより、インスリン抵抗性(身体がインスリンに反応しにくい糖尿病の前段階)、高血圧、高脂血症を生じ、動脈硬化が進みやすい状態で、将来心血管障害(狭心症や心筋梗塞)や脳血管障害(いわゆる脳卒中)の発症率が高くなることが報告されてきています。
またMSは更年期に見られる徴候や症状と密接に関連し、さらにがんなどの悪性腫瘍の発症にもつながると考えられており、早期に対応していくことが重要と考えられます。
40歳を超えるあたりから、体の中にいろんな変化が生じてきて、重病ではないですが、様々な不調が出てきます。
さらにこの時期には、仕事や家庭からの社会的、精神的ストレスがかかるため、その症状を単に性ホルモンの低下(更年期障害)として捉えてしまうのでは、適切な診断や治療ができないと考えています。
そこで登場するのがアンチエイジングの概念です。
40歳を越えて、少しずつ生じてくる種々な老化を総合的に捉えていけば、病気の発症予防やさらに一歩超えた治療(若返り)が可能と考えられます。
またアンチエイジングは、増加する子供の肥満や無理なダイエットをする若い女性に対しても必要な医療となると考えています。
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