
いびきは睡眠をともにする周囲の人に迷惑をかけます。「夫(または妻)にいわれた」、「結婚前に治しておきたい」、「友人と旅行に行けまい」といって来院される患者さんは多いのです。しかし、いびきはいびきをかくご本人の健康も非常に損ねていることを忘れてはなりません。
いびきの原因となるのどや鼻の病気が害になるだけではありません。いびきがひどくなると、睡眠時無呼吸症候群といって、大きないびきの後に呼吸が止まることを繰り返す病気になることがあります。この睡眠時無呼吸症候群は、肥満傾向の中年男性に多いのですが、女性・小児にも認められ、夜はいびきと無呼吸発作、昼は居眠りが多くなります。呼吸が止まっている間は血液中の酸素が減り、心臓・血管の負担となり、心肥大、チアノーゼ(Cyanosis)、狭心症、心筋梗塞、時に突然死の原因になりうることが最近知られてきました。

近年、睡眠障害の恐ろしさに対する一般の知識が急速に高まりました。特に睡眠時無呼吸症候群は頻度も高く、成人男子においては約4%の罹患率であるといわれています。10秒以上呼吸が止まることを無呼吸といい、無呼吸が一晩に30回以上、あるいは1時間に5回以上起こり、様々な臨床症状を呈する状態を睡眠時無呼吸症候群といいます。この睡眠時無呼吸症候群は放置すると高血圧、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、脳卒中などを引き起こす可能性があります。
睡眠障害の客観的把握と障害の程度をチェックするため、睡眠障害スクリーニング検査をお勧めします。検査は原則的に1泊2日の入院で行います。まず入院前に、鼻咽腔ファイバー検査、一般血液検査、レントゲン検査、心電図、呼吸機能検査、鼻腔通気度検査等を行います。
入院日は夜8時頃より睡眠時無呼吸モニターをつけていただき、翌朝6時頃までの約10時間の睡眠状態を測定します。実際の検査はセンサーを鼻の下、顎の下、指につけます。これにより鼻からの呼吸状態、気管音、動脈中の酸素の量、脈拍数を連続的に測定します。 装置の着用により眠れないのではないかと不安に思われるかもしれませんが、実際には、ほとんどの人が熟睡されておられます。検査終了後、結果は短時間で分かります。
少しでも心配な方は、ご自分の健康のため、ご家族のため、「たかがいびき」とあなどらず、専門医にご相談することをお勧めします。

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