「最期」をどこで迎えるか?看取りの前に家族がやっておくべきこと

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「最期」をどこで迎えるか?看取りの前に家族がやっておくべきこと

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

人生をどのように過ごしたいのかが、終末期の過ごし方のヒントになります。厚生労働省の調査によれば、終末期の療養場所に関する希望として、約6割が「自宅」と回答。
一方で、それ以上の人が「実現困難である」とも回答しています。
「介護してくれる家族に負担がかかる」「病状が急変したときが不安」などがその理由です。

在宅での看取りは、本当に「実現困難」なのでしょうか。
私はそうは思いません。
これまで、在宅で「良い看取り」をした介護家族とたくさん出会ってきたからです。

最初はほとんどの方が「不安」「やっぱり無理」といった言葉を口にします。
けれども、在宅介護や在宅医療のチームとしっかり連携すれば、決して不可能ではない、むしろ自宅での看取りは自然なことなのではないかと感じてきました。

そこで今回から4回にわたって、「看取り」をテーマにした連載をお届けします。
1回目は、「最期をどこで迎えるか?」を考えるにあたって、ご家族がやっておきたいことをまとめます。

悔いのない看取りのためには、本人とよく話しあうことが大切です。
とはいえ、「何を聞いたら良いの?」「どうやって聞けば良いの?」など、実際にどうしたら良いのか具体的な一歩が踏み出せないもの。今回は、そんな疑問にお答えします。

● 本音を言いにくい「最期を迎える場所」
「自分のことができなくなったら、施設に行くわ」
「最期は病院のほうが安心だよ」

親御さんから、このような言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
しかしその言葉、本心からの言葉でしょうか。

言葉の裏には「本当は自宅で最期を迎えたいけれど...」という本音が隠れているのかもしれません。

「子どもに迷惑をかけたくない」「見苦しいところを家族に見せたくない」という思いから、自宅以外の場所を口にする人は少なくありません。

死を感じさせるテーマの話題は、できれば避けたいと考えても当然です。
縁起でもない、と感じる方もいるでしょう。
しかし、死は生きることの延長にあるもの。

「最期をどう迎えるか」と向きあうことは、その人の生き方や価値観を知ることでもあると私は思います。
本人が意思表示できるときに、人生観や死生観につながる話をたくさん聞いておきましょう。


●「最期の迎え方」をカジュアルに話しあう方法
「もしも自分がもう長くないとわかったら、どうやって過ごすのが理想?」
こんなテーマで、話しあってみてください。

あなた自身の意見も言えば、親御さんも本音を言いやすく、話もしやすいのではないでしょうか。

「孫と一緒にいたい」「あちこち旅行に行って、きれいな景色を目に焼きつけておきたい」など、普段は口にしないご本人の思いが聞けるかもしれません。
あるいは、「おいしいお酒が飲めれば、それで良いよ」「人がいると気を遣うから、ひとりで静かに過ごしたい」なんて本音が出てくることもあるかもしれませんね。

「どのように生きたいか」。
最期をどこで迎えるかを考えるうえで、大きなヒントになります。


● 自宅と病院はどう違う?それぞれのメリットとデメリット
病院は、何が起きてもすぐに対処できる医療体制が整った場所。
24時間身体のことをモニタリングしているので異変にすぐに気づいてもらえますし、体調変化に対して細やかな対処をしてもらえます。
健康状態に不安がある人にとっては、「安心して任せられる場所」です。
安心感はありますが、人の出入りの多さやモニター音などもあって、決して静かで落ち着く環境とは言えません。
また、新型コロナウイルス感染症の感染の危険性は大分減ったものの、多くの疾病を有した入院患者さんのいる病院は、未だ面会には慎重な対応をしているところもあります。 
そもそも、どこの病院でも面会時間は決められていますので、ずっとそばについていることはできません。
面会したいとき誰でも面会ができる、という環境下か否かは終末期には大事なことです。

一方、自宅で療養する場合、急変に対処してくれる医師や看護師はそばにいません。
訪問医や訪問看護のサポートを受けながら、ご家族が見守ることになります。
在宅介護の大変さに加えて、終末期には不安や怖さをご本人はもちろんご家族全員が感じることもあるでしょう。

とはいえ、自宅なので「好きなように過ごせる」という良さがあります。
起きる時間も寝る時間も自由。
好きなものを食べられますし、晩酌したって誰にも咎められません。

家族もお見舞いのために身支度したり、病院に行く時間を調整したりする必要がなく、いつでも好きなときに顔を見たり、声を掛けたり手を取ったりすることができます。

自宅と病院、終末期を過ごす場所としてどちらのほうが良いかは人それぞれ。
何を優先したいかによって、適した「最期の場所」は違ってきます。


● 悔いのない看取りのために「本人の意思を尊重する」
最優先されるべきは「本人の意思」。
家族はあくまで、「本人の意思を推定する人」であり、本人が意思表示できないときの代理人です。

ご家族が「少しでも長生きしてほしいから、延命治療をしてほしい」と本人の意思に反して決定するのは、倫理的に問題があります。

もちろん、ご家族としての思いがあるのは当然です。
家族としてのあなたの思いも尊重されるべきもの。
だからこそ、ご本人が意思表示できるときにたくさん話しあっておくことが大切。

「もしものとき延命治療はしないで」と言われて納得できなければ、「そんな決断は耐えられないかもしれない」と言う気持ちをありのまま伝えておくべきです。

たくさん話しあえば話しあうほど、お互いの気持ちを理解することができます。
それによって、どちらかの考えが変わることもあるでしょう。
心身の状態や時間の経過によって気持ちが変化することもあるので、何度も話しあうことが大切です。

意見があわないまま終わってしまったとしても、話しあったことは無駄になりません。
予期しない決断を迫られて迷ったときは「本人がどう言っていたか」を知っていることが支えになってくれます。
どのような看取りであっても、「本人の意思」を反映していれば、残された側は「これで良かったんだ」と思えるはずです。


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