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私たちが立っているとき、腰には上半身の体重がかかっています。これは、全体重の 約60%の重さ。体重が50kgの人なら30kgもの重さが腰にかかっているのです。
私たちのからだを支える背骨は、「椎骨」という24個の骨が積み重なってできています。その椎骨のうち、腰の部分にあたる5つの骨が「腰椎」。この腰椎と椎骨間のクッションである椎間板が、上半身の体重を支えています。
腰痛のひとつの原因としては、背骨の老化があげられます。しかし、最近では、仕事や家事の機械化、運動不足などにより、昔の人々に比べ筋肉の衰えが目立つようになりました。その結果、背骨を支える筋力が弱まり、腰椎や椎間板に障害が生まれて、腰痛が起こることも少なくありません。
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腰痛は、毎日の生活を見直すことで、予防することができます。基本は、腰に負担をかけないということ。日常生活におけるさまざまなシーンごとに、そのポイントを見てみましょう。
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イスの場合は、ひざの高さが脚の付け根よりやや高くなるように、背すじを伸ばし深く座る。床に座る場合は、あぐらや横座りよりも正座のほうが腰への負担が少ない。
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足は踵から地面につけて、つま先で蹴るように。下腹を引き上げ、やや歩幅を大きく。靴は、靴底に柔軟性のあるウォーキングシューズがおすすめ。ハイヒールは腰が反りやすいので腰に負担が。仕事などで履かなければならない場合は、ウォーキングシューズと併用するとよい。
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横向きのときはひざを曲げ、仰向けでもひざの下に座布団などを入れて寝ると、腰に負担がかからない。うつぶせは、腰が反りやすくなるので避ける。また、敷き布団やベッドは、適度に硬さがあり腰が沈み過ぎないものを使う。
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中腰ではなく、ひざを曲げて腰を落とし、できるだけからだに近づけてから持ち上げる。
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テレビ、パソコンに対して、からだが正面を向くように。とくにパソコンは長時間、同じ姿勢になりがち。1時間に1回程度は休みをとり、からだをほぐす。
このほかには、肥満も腰にかかる負担を大きくするうえ、からだのバランスをとるために腰を反らせるのでよくありません。肥満を防止するためにも適度な運動を心がけましょう。
たとえば、プール。水中でのウォーキングもよいでしょう。泳ぐ場合には、平泳ぎよりもクロールのほうが腰に負担がかかりません。腰痛には冷えも大敵。泳いだあとは、必ずお風呂やジャグジーで足腰をよく温めましょう。
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重いものを持ち上げるときなどには、おなかに力を込めますが、このとき、おなかのなかに生じる圧力が「腹腔内圧」です。この腹腔内圧が、背骨とともに、腰を支える力となります。腹腔内圧は、腹筋が強ければ、それだけ高まります。このように、腹筋や背筋も、腰を支える自前の”コルセット“として大事な働きをしています。
前述のとおり、背骨は老化とともに衰えていきますが、腰のまわりの腹筋や背筋を強くしておけば、それを補ってくれるので、腰痛も起こりにくくなります。
そこで、おすすめしたいのが、「腰痛体操」[下記(1)~(5)]です。
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(1) |
腰部のストレッチ |
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仰向けに寝て、ひざを曲げる。ひざを胸に引き寄せて抱え込み、おしりが床から浮くぐらいの姿勢で5~10秒保つ。 |
(2) |
腹筋のトレーニング |
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仰向けに寝て、ひざを立てる。手を頭の後ろで組んで、肩をゆっくりと床から約10cm浮かせる。おへそのあたりを覗くような姿勢で5秒停止する。 |
(3) |
背筋のトレーニング |
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仰向けになり、ひざを曲げる。おなかに手を当てて足を踏ん張り、腰を持ち上げる。このとき、上がるのがおしりだけにならないようにする。 |
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(4) |
① |
伸ばした右脚の内ももに、曲げた左足の右の裏をつける。 |
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② |
両手で、右足の裏(辛ければ足首)をつかむように上体を倒し、太ももの裏と背中をしっかり伸ばす。 |
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③ |
左足を伸ばし、同様のストレッチを行う。 |
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(5) |
① |
仰向けになり、右脚を曲げて左の脚側に倒す。 (右の太ももと伸ばした左脚の角度が90度になるように) |
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② |
曲げた右脚のひざの上に左手を置き、軽く押し、右側の腰を伸ばす。上体にひねりを加えると、より効果的。 |
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③ |
左脚を曲げて、同様のストレッチを行う。 |
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腰痛体操の効果をまとめると、次の3つのようなことがあげられます。 |
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筋肉や靭帯を伸ばすストレッチ効果によって、柔軟性を高め、ケガなどをしにくくします。
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腹筋と背筋は、いわば筋肉のコルセット。これらを強くすることで、椎間板や腰椎への負担を軽減します。
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体操をしてからだを動かすことで、血液の流れがよくなり、疲れがとれやすくなります。
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腰痛体操で大切なのは、自分のペースで続けることと、無理をしないこと。とくに以前、腰痛になったことのある人は、回数や程度を考えながら、慎重に行ってください。
一応の目安としては、柔軟性を養うストレッチ、腹筋、背筋のトレーニングを、それぞれ10回ずつ行い、朝、昼、晩の3回繰り返します。仕事などの都合で、昼に行えない場合は、朝と晩だけでもかまいません。
そして翌朝、痛みや疲れがないようなら、回数を徐々に増やしたり、負荷を大きくしたりしていくとよいでしょう。
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注意していただきたいのが、腰痛体操の目的は、腰痛を治すのではなく、腰痛の予防と再発の防止にあるということ。したがって、激しい痛みがある急性の腰痛の人が、この体操をすると、かえって症状を悪化させてしまいます。急性の腰痛の場合は、まず安静を心がけ、症状が落ち着いたら専門医の下で適切な治療を受けてください。
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