健康予防医療コラム ~その他~
風景を作る心のモード
目の前のエレベーターのドアが閉まりそうになって駆け込もうとしたけれど閉まってしまった時、信号が変わりそうになって走ったけれど赤になってしまった時、車の運転をしていて、前の車がゆっくり走っている時など、イライラする人がいます。時間とすれば次の信号待つことも次のエレベーターを待つ時間もそんなに長い時間ではありません。車の運転だって、急いだって次の信号で止められて遅い車に追いつかれることもあります。ですから、時間の問題というよりも、心の問題なのかもしれません。
忙しいときに作業の手際が悪く、もたもたしている人を見た時、ヘッドホンのコードが絡まってしまって解けなくなっている時など、日常の生活でも小さなことの積み重ねでイライラがたくさん増えていきます。そんな時、皆さんの心にはどんな気持ちや言葉がありますか?「あー面倒くさい」「あー時間かかってしまう」など、気持ちだけがぐるぐる先へ行こうとして前につんのめった感じになっているのではないでしょうか。「もっと手際よくできるだろう」「待ちたくない」「さっさとすませたい」という考えがいつも自分の頭にあると、「そうでないもの」「そうでない状況」に出会うとイライラします。自分自身についても「あー自分にイライラする」という人もいます。
手際よいに越したことはないし、信号もエレベーターも待たなくてよければラッキーというくらいに思っているだけなら、「今日は信号が青ばかりでスムーズだったな」というくらいですみます。信号で待ったとしても「歩行者信号は赤か青のどちらかだから二回に一回は待たされて当然」と思う程度です。「こうあるべきだ」「こうでないと嫌だ」という基準や好み、優劣などを感じるモードで物事を見るといつも一喜一憂しないとならなくなります。ですから、いつも穏やかな心でいたければ、「心のモード」を変えることが一番手っ取り早いことになります。「こういうこともある」「どうするかはその時考えよう」「起こった事態を受け止めよう」という、「受け入れる心のモード」でいられると、一喜一憂のジェットコースターから降りることができます。だからといって、評価はするなとか、目標も役割意識も捨てろと言っているのではありません。目標を持って努力することや、今より向上しようと思う気持ちは大切です。しかし、自分の努力ですぐにどうにもならないことについて「こうあるべき」という基準や優劣の物差しを当てるモードでいると苦しくなるということです。特に、「過去」や「未来」という現在の自分の力ではどうすることもできないところに「あるべきモード」で向き合うと結局一喜一憂が解消されずに、「後悔」「自己嫌悪」「未来への不安」が続くことになります。
自分が努力して変えられることについては、目的志向,目標志向で向き合っていくことも大切。しかし、信号やエレベーター、係員のもたもたした態度など自分の努力ですぐに変えられない出来事には、「受け入れモード」が役立ちます。つまり「心のモード」の切り替えが大切ということですね。楽器の練習をしている時、うまく指が動かないことについては丁寧に練習する努力をするけれど、いつも曲の同じところで間違えてしまう自分に対しては「受け入れモード」でいられると楽しく練習できますね。日常のいろいろな場面での自分の「心のモード」チェックしてみてください。
監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2017年07月01日