健康予防医療コラム ~その他~
ため息 吐息
家族や職場の同僚がため息をついたとき、「何か心配なことでもあるのかな?」「きついのかな?」などと心配になったり不安になったりするのではないかと思います。また、職場で席の近い人が何度もため息をつくので、イライラするという経験をした人もいるかもしれません。ところで「ため息」ってなんでしょう? 「ため息」とも「吐息」ともいいますが、心配なことがあるとき、苦しいとき、がっかりしたとき、ほっとしたときに、息を深く吸って「ハァーッ」と吐くという呼吸ですね。本人が気づいていることも、気づいていないこともあります。生理学的には、不安やストレスを感じると呼吸が浅くなる傾向がありますので、身体が無意識的に呼吸を回復しようとしていると説明できるかもしれませんが、「癖」になってしまっているような人もありますので、なかなか理解が難しいのが「ため息」です。ほっとしたときにも、辛いときにもため息がでるということで、対人関係では時としてトラブルの原因にもなります。
「不幸中の幸いだったね…」と言う気持ちで思わずため息を漏らしたところ、相手が不機嫌になってしまった、という経験を話してくれた人がいました。どういうことかというと、「その程度でよかった…」と言う、「ほっとした気持ち」のため息をついたところ、「そんなに嫌なら無理に聴かなくていいよ!」と、怒らせてしまったというのです。最初は何が何だかわからず戸惑っていたら、「その、ため息だよ!」と言われて、怒らせた理由がわかったそうです。「不幸中の幸いでよかった」という安心のため息が、「つまらない話でうんざり」という不快なため息ととられたためのコミュニケーションのずれです。全く正反対に伝わってしまったわけです。このように、見過ごされがちですが、コミュニケーションでは重要な意味を持っているため息ですので、その意味がどのように伝わったかということは、確認しておいた方が良さそうですね。
ふとため息をついてしまったとき、その後に言葉を添えてみましょう。「あーほっとした」「そうだったのか、…大変だったね」というように、自分のため息にその意味を付け加えることで、誤解を防ぐことができます。また、そばの人がため息をついたときには、「どうしたの?よかったら話聞かせて」と一声かけてあげましょう。ため息の向こうには、「こころ」があります。
監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2017年06月01日