健康予防医療コラム ~その他~
ダイヤモンドだね・・・
ダイヤモンドという言葉を聞いて、キラキラと輝くきれいにカットされたブリリアント・カットのダイヤモンドを思い浮かべるのは、私だけではないでしょう。数ある宝石の中でも代表的な美しい宝石です。透明で、美しく、様々な宝飾品に加工される女性の憧れの的の宝石ですよね。私が中学生の時、理科の授業でダイヤモンドの成分が「炭素」であると聞いた時には、とても驚きました。炭素、つまりカーボンは要するに炭です。ダイヤモンドもカーボンも同じ成分と聞いて、あまりの違いに不思議な気分でした。ダイヤモンドはとても硬いことで知られています。硬さは硬度10です。その硬さから工業用には人工ダイヤモンドを利用したダイヤモンドカッターがものを切るためによく用いられています。一方、炭はそんなに固くもないし、真っ黒です。元素が同じなのにどうしてここまで違うのか、やはり今の私にとっても不思議な感じが消えることがありません。
私はカウンセラーとして多くの人の相談を受けてきました。悩みの中にはいろいろなものもあります。自分が人に誤解されるとか、自分らしさをなかなか表現できないとかの悩みがあります。例えば人付き合いが苦手で人前で緊張しやすい人が、なんと周りの同僚から「クールな人」と見られていることがあります。緊張してあまり笑顔もなく、冗談も言わない人なので、内心はドキドキしているにもかかわらず相手にはクールに見えるのでしょう。また、人に好かれる自信が持てなくて、自分の存在が忘れられるのではないかと不安を感じている人が、派手に振る舞って強気に出てしまうので強引で自信家だと誤解されることがあります。まわりから見られる自分と実際の自分とのずれがあると、本当の自分が分かってもらえないという辛さがいつも心にある生き方になってしまいます。
このように、「自分の本質が誤解されてしまうという悩み」の相談を受けていると、ふとダイヤモンドのイメージが湧いてくることがあります。あのキラキラ輝く強くて美しいタイヤモンドも炭と同じ成分なのだなという感じです。成分は同じなのに、その物質のあり方が違うだけで、周りの評価も全く違うものとなってくるのです。工業用ダイヤモンドも熱に弱いので、ダイヤモンドカッターは切るときに高温になる金属は切れないそうです。また、ダイヤモンドは硬いのですが、欠けやすいとも言われます。ダイヤモンドだからといっていつも強いわけではありません。宝石店のショーケースに並ぶキラキラ輝くダイヤモンドリングをみていると、怖いものは何もない女王様のような印象ですが、ダイヤモンドも弱点はあります。つい、強いものや美しいものを見ると圧倒されがちですが、こうしてダイヤモンドのことを思い出しながら、周りの人たちを見ていると、
何か別の印象が湧いてきます。輝いているのはその見え方であって、本質ではなく、輝く条件が揃って初めて輝きを見せるのではないかという印象です。そして、もしかしたら誰もがダイヤモンドのように見えることも不可能ではないという気持ちにもなってきます。ダイヤモンドの輝きをこころにもちながら、同時に炭の価値も忘れずにいたいと思います。
監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2017年04月01日