健康予防医療コラム ~その他~
満足に満足していますか
あなたは最近「満足した」という体験をしましたか?例えば、食べたいものお腹いっぱい食べた、きれいな景色を見た、難しい仕事をやりあげたなど、食べ物にしても娯楽にしても、仕事にしても満足感を感じられるとうれしいですね。ところで、満足の反対は何でしょうか。「満たされなさ」でしょうか、それとも「不満」でしょうか。おいしいもの食べた後に普段食べているものを比べてしまうと、「美味しい本物の味を知ってしまったから、普段食べているものが物足りなくなってしまった」という体験をしたことはありませんか。ここで注意しなければならないことがあります。それは「満足は同時に次なる不満を生み出す」ということです。たしかに、「いま満足したから当分大丈夫」ということもあります。しかし、人間は欲深いものですから、満足の次にはさらなる大きな満足を求める傾向があります。例えば、料理でいえば「もっと美味しいもの」、遊園地のアトラクションでいえば「もっとスリルのあるもの」、ギャンブルでいえば「もっと高額な配当」という具合に、要求水準が高くなります。コレクターの方が沢山収集して、それでも集め続ける心理はここにあります。もっと大きな満足を求めて人間は手を伸ばし続けます。
一方で、あまり欲のない生活を送っている人がいます。最近の若い人は「生きていければいい」ということで、ブランドやレジャー、旅行、出世などにはあまり興味がなく、コンビニやファーストフードの食べ物を食べてパソコンがあれば幸せという人が多くいるそうです。それで「満足」ということで、「もっともっと」とは思わないと言います。欲に翻弄されるのも苦しいですから、無欲な生活は心穏やかなのかもしれません。しかし無欲過ぎても、発展性や向上心が生まれにくくなるということもあります。「もっと美味しいもの」「もっと美しいもの」「もっと完成度の高い作品」というように「現状に満足しない」という気持ちが、努力や発展を生むのだとしたら、その満足しないという気持ちはとても大切かもしれません。今日の自分に与えられた今の環境に感謝しつつ、さらに前に進む気持ちを持てれば、地に足ついた現状に満足しない自分がいることになります。日々の生活での瞬間瞬間の小さな満足を味わいつつ、そこをさらに高めるための努力もじっくり取り組めるようになることが、ストレスを感じない「満足」との上手なつきあい方になりそうです。
監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2016年12月09日