健康予防医療コラム ~その他~
「怒り」VS「不安」
あなたは最近いつ怒りましたか?またはイライラしましたか?人のぞんざいな対応や、自分がないがしろにされたような気持ちなると怒りを感じますよね。また、自分自身に対しても「こんな自分が許せない」と怒ってしまうこともあります。怒りというとネガティブなイメージが強いのですが、正義感とともに湧いてくる怒りもあります。不正行為や犯罪行為に対して「許せない」という正義の怒りです。怒りの起こるきっかけはいろいろでも、怒りという感情によって起こる身体的反応は同じです。心臓がドキドキして、呼吸が速くなり、筋肉に力が入ってきます。行動面では、落ち着かずに貧乏揺すりしたり、ウロウロと歩きまわったりというように、じっとしていられなくなりますね。そうなのです、怒りにはエネルギーがあります。自己主張の要素もあります。なぜなら、怒りの背景には「自分のポリシー」「自己主張」があるからです。
「怒り」に対して反対の感情があります。それは不安です。勢いのある怒りとは反対に、不安は受身的な感情です。「うまく行かなかったらどうしよう」「あの人怒っているかな」「嫌われたらどうしよう」というように、出来事や相手の態度などによって自分の存在があやうくなることを心配する感情です。勢いのある自己主張の感情である「怒り」と、受身的で相手や状況に影響される感情である「不安」はその方向性が逆なので、不安と怒りは共存することが難しい感情です。自分が失敗をして「すみません」と申し訳無さを感じてドキドキしながら不安になっていたのに、相手にしつこく責め立てられていると怒りが湧いてきて「そんな言い方ってないんじゃないですか」と言ってしまったことありませんか?それが不安が怒りにチェンジした瞬間です。怒りが頂点に達すると不安が消えていきます。謝罪が転じて攻撃になることもあります。相手を攻撃するかどうかは別として、怒りが湧いてくると受け身的な逃げ出したい気持ちは吹き飛んで一気に勢いがでてきます。
不安だと相手の様子をよく見ようとするし、謙虚です。怒っている時には勢いもあるし、大胆になりますが相手への細かい配慮はしにくくなります。つまり、怒りと不安はそれぞれが持つ反対の特徴があるのです。怒りと不安はとかく厄介者扱いされがちですが、上手に利用すれば、コミュニケーションをダイナミックに、そして豊かなものにできるのではないでしょうか。怒りと不安のバランスが取れてくることで、心も豊かになりそうですね。
監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2016年08月01日