健康予防医療コラム ~その他~

緊張感が味方になる時

~「プラス緊張」を最大に活用して~

 緊張感に困ってる方がたくさんいます。あがり症で自己紹介が苦手とか、会議やプレゼンテーションでドキドキしてしまうとか、よく耳にします。緊張することによって普段の自分の能力が発揮できないと悔しいですよね。リラックスしようと思って深呼吸したり、手のひらに人という字を書いて飲み込んでみたりしても、ドキドキする気持ちが収まらないと叫びたい気持ちになります。試験会場や接待で緊張してしまって言葉が出てこなかったときには、後でかなり落ち込みます。
 
 人はなぜ緊張するのでしょうか? 緊張しなければいつも自分が出せたのにと思う時、緊張は厄介のものです。しかし、人間の体や心の仕組に本来無駄な働きは無いのではないかと思います。例えばアレルギーの反応にしても体を守ろうとする防衛の仕組みが過剰に反応している状態ですから、働き方がうまくないだけであって、仕組みそのものはちゃんと意味があるのです。体を守ろうとする免疫システムがなくなったら、それこそ命が危ないのです。そう考えて「緊張感」を見なおしてみると、緊張にも本来は大切な意味があることに気付かされます。「うまくやろう」という気持ちや、「目標を達成したい」「負けたくない」というような「ちゃんとやろう」という気持ちが緊張感を引き起こすのです。ですから、いい加減な人は緊張しません。しかし、能力があれば緊張しないということではありません。「毎回ステージに立つたびに緊張するという」実力派歌手の人の話を聞いたことがあります。力があっても、経験があったとしても、緊張するときは緊張するようです。一方、脂汗をかきながら、しどろもどろになって、やるべきことができなくなっている人も見かけます。いったいどこが違うのでしょう。
 
 ここで例えば仮に「プラス緊張」「マイナス緊張」と呼んでみることにします。身の引き締まる状態としていい意味の緊張感として働いているときが「プラス緊張」です。反対に本来の能力が発揮できなくなって作業や役割がうまく果たせなくなるなど、足を引っ張る緊張を「マイナス緊張」です。私は以前ピアノを習っていたのですが、そのレッスンでピアノ先生から言われた言葉があります。「髪の毛一本一本がぴんぴんに立つような緊張感を持って弾いてください」という言葉です。それと同時に「肩の力抜いてくださいね」とも言われました。髪の毛がぴんぴんに立ちながら肩の力を抜くというコツは当時の私には非常に難しいものでした。しかし、今はその意味がなんとなくわかるような気がします。緊張感を味方につけて、その力によって力を発揮するエネルギーとしながら、でも同時に身構えてカチカチにならないような動きを保つことを、ピアノの先生は言いたかったのかなと思います。
 「プラス緊張」を最大に活用して、「マイナス緊張」にならないようにすること、そんなことができたらいいですね。緊張を敵ではなく、味方につける方法考えてみましょう。いきなり本番では難しいかもしれないので、日常の小さな緊張感で練習してみると良いと思います。たとえば、緊張する自分に対して「私、がんばろうとしているね。その気持大切に」と自分にエールを送りながら、「じゃ、体を整えようね」といって、骨盤をまっすぐに立てて、体軸を意識します。体を少し揺すったり、肩を上下させて、「動き」を滑らかにします。軸を立てて、心の芯を保ちながら、全身の力を整えていくのです。緊張感が目標に向かう力となるのを感じてみましょう。
  

監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2016年06月01日

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