健康予防医療コラム ~その他~

気がつけば「物知り」

~体験をベースとして様々な体験とつながる~

 身の回りを見渡して、物知りな人はいますか。博学、知識が広い、雑学王、いろいろなことを知っている人とはどんな人なのでしょうか。クイズが好きでクイズ番組の出演を目指していつも雑学辞典を読んでいる人、確かにそういう人はいろいろなことを知っています。クイズでは一瞬で「○○は××」というように、一言で回答できる知識を問われますから、「ものの考え方」、「経験知」というよりは「知識」そのものです。それほど深みはありません。
 
 昆虫、車、アニメなど、ある分野が大好きで、いつもその世界に触れていて、結果として知識が増えた人はその分野についてとにかく知識が豊富です。旅が好きな人は、いろいろな土地の建物や、食事、生活スタイルなどの風習を経験しているので、世界のいろいろな生活を知っています。サッカーを子供の頃からやっている人、ピアノのレッスン、ダンスなどいつもやっている人は、体の動きや演奏の仕方などの体験的な知識、知恵をもっています。イチゴ酒の作り方をレシピとしてだけ知っていることと、イチゴ酒を実際に作った人は違います。甘いイチゴの香りをかぎながらへたを取り、氷砂糖とともに瓶に入れて、そこに少しずつ酒を注いでいくという作業をします。甘い香りと共に、日々少しずつ赤く色づくお酒を眺めつつ、1ヶ月もするとできあがり、甘いお酒を楽しみます。イチゴ酒作りでの「香り」、「手触り」、「色づき」、「味」すべて体験的な知識と経験になります。スポーツにしても音楽の演奏にしても、体験をベースとした知識や経験は五感を通して得られた体験ですのでリアルに記憶されます。そしてその体験を人に語ったときにも臨場感があります。
 
 単に知識として知っているだけでは無い体験の持っている深み、広がりがあるので、好きなことを語る人の目は輝き、生き生きとよろこびや辛さや苦しみなど、心に訴える力があります。知識を得ることを目的にするのか、好奇心を持って色々な体験をした結果として詳しくなるのとは大きく違っています。体験的知識が多い人は、その体験をベースとして様々な体験とつながることができます。イチゴ酒を作ったことがあれば、お味噌を自作する人の気持ちとつながること、畑を耕す人ともつながるところがあると思います。好奇心を持って何かに打ち込んでいるうちに体験的な経験値が増えて「物知り」になるというのは、素敵なことですね。好奇心が生み出す「気がつけば物知り」はその人の人生のストーリーであり、財産だと思います。
  

監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2016年05月01日

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