健康予防医療コラム ~その他~

背中を押さないで背中を押してほしい

~笑顔が応援のメッセージに~

 やらなければならないけれども、なんとなくやる気がなくてそのままになっていることは意外とたくさんあると思います。それは仕事上のことであったり、家事であったりします。取りかかってしまえば5分ほどで終わるような、やればすぐ終わるようなことをなぜ躊躇してしまうのでしょうか?
 「今日こそやらなきゃと毎日考えているんだけれど…」と、先延ばしにしている人がよく言います。一言のお礼のあいさつでもなんとなく億劫になってしまうのはなぜでしょう。体調が悪く、気持ちが滅入っているときには、特に先延ばしが多くになります。疲れて仕事から帰って来て、こたつに入って、着替えるのも面倒でなんとなくテレビのリモコンスイッチを入れてぼーっと見ている間に寝てしまったという人の話をよく聞きます。心身が疲れきっているときは、動きにくくなるものです。
 ただ、それだけではありません。慣れていない新しい役割、仕事、人間関係も取りかかるのに抵抗を感じることもあります。人は流行のワンパターンにはすぐに飽きますが、同時に自分の仕事の進め方、生活習慣というワンパターンを崩すのには抵抗を感じるところがあります。新しいこと、慣れていないことには、神経も使うし緊張するからです。
  
 躊躇しているときに人が力を貸してくれて、ぐずぐずする場面を乗り切ることができた経験をお持ちでしょうか。ぐずぐずしているときに「さぁ、片付けちゃいましょうよ」と笑顔で声をかけられて重い腰をあげられたという人も多いと思います。その時の笑顔は「君はできるよ」「いざとなったら自分が助けるから」と言う応援のメッセージを物語っています。この、「心の応援」があると重い腰を上げやすいですね。動けない気持ちを受け止めてもらって心がほっとすると緊張がほぐれます。ほっとしてしまうとあとは行動するしか無いのです。
  
 プールのふちに立って「さあ、飛び込もう」もうと思ったときに軽くポンと背中を押して貰うのは「応援」ですが、まだまだぐずぐずしている人の背中を押すことは「突き落とし」になりますよね。ぐずぐずする気持ちを「無理しないでいいよ。その気になったらやろうね」と柔らかく受け止めて心に寄り添われると、まるで優しく背中を押されたような気持ちになり、前に進むことができるのかもしれません。見守りながら「背中を押さないで背中を押す」ということ、そんなことができたら素敵な応援になりますね。
  

監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2015年12月01日

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