健康予防医療コラム ~その他~

モデスト・ブラッグ

~エピソードを交えながら生き生きとリアルに~

 モデスト・ブラッグ(modest brag)やハンブル・ブラッグ(humble brag)という言葉を聞いたことがありますか?モデストやハンブルは「謙虚な」「ささやかな」と言う意味があります。ブラッグは「自慢」という意味の英語です。「謙虚な自慢」とは変な言葉ですが、さりげない自分のアピールです。自分のことをよく知らない人を前にして話すときには、まず自分を信用してもらう必要があります。話しながら、話の中にさりげなく自己アピールを入れていくのです。
 「私は○○を持っています」「私は○○ができます」というのではなく、言葉の中に織り込み、添えていくように伝えるなど工夫をします。たとえば、「多くの従業員の事を考えると、私が病気で倒れるわけにはいかないので、運動や食事に注意して健康管理をしています」「この仕事を三十年やっていると、いろいろな人との出会いもあり、失敗もあり、そして喜びもあります」などです。
  
 個人主義のアメリカでさえこのような控えめな表現が重視される位ですから、やはり露骨な自慢話は何処でも余り歓迎されないのでしょう。自分の意見をはっきり言うという個人主義の自己主張と、自慢話は別なようです。話を聴く方としても、多くの経験と見識を持ち、信頼できるような人格を持った人の話を聞きたいし、そういう人と関わりたいのです。その人の経歴、業績には特に興味があります。講演会などでは、司会者やインタビュアーがその人の功績や作品、交友関係などを紹介したりすることで間接的に知ることができますが、いつも司会者がいるとは限りません。ですから、一対一の関係性で相手に自分を理解してもらう必要があるときに、特にモデスト・ブラッグは力を発揮します。
  
 いくら工夫しても、嫉妬を感じやすい人、人と自分をいつも比べて負けたくない人は敏感に「自慢」の部分を感じ取るかもしれません。しかし、スマートに自慢を伝えられると、多くの人は「へぇ…そんな経験をして生きてきたんだ」と、素直にその人の人生についての語りを受け入れることができます。話の本題に入る前に「この人の話を聞こう」と思わせてくれるストーリーがあると、ワクワクしながら本題を受け入れることができます。司会者の読み上げる経歴では見えない部分も、本人自身がエピソードを交えながら生き生きとリアルに語ることで「人となり」が伝わって来ます。それもモデスト・ブラッグです。
 でも、なにより大切なのは、表現する以前の中身です。実質としての自分自身を磨いていくことが第一であることは言うまでもありません。
  

監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2015年02月01日

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