健康予防医療コラム ~その他~

選択肢のマジック

~本当に必要なものを手に入れるのは意外と難しい~

 ある実験がテレビで放送されました。スーパーの2カ所の入り口で、1カ所では4種類のジャムを販売。もう1カ所の入り口では24種類のジャムを販売。人が多く集まったのは24種類の入り口の方でしたが、売れたのは4種類を販売した入り口の方でした。選択肢が多いと、「わぁ~すごい。沢山あるぞ」と人を引きつける魅力はあるのですが、いざ買おうとなると、迷いすぎて決められなくなるというのです。決定回避の法則:「選択肢が多いと人はむしろ何も決められなくなる」現状維持の法則:「選択肢が広すぎると、人はいつも通りのものを選んでしまう」(プリンストン大学シェイファー教授)というのは、テレビCMでも流れたことがあるのでご存じの方も多いでしょう。先の実験はそれを裏付ける結果でした。
  
 以前、あるファッションブランドがセーターの多色展開をしたことがあります。シンプルなカシミアのVネックセーターなのですが、数十色もあるのです。ずらっと並んだディスプレイを見た人は皆「綺麗!素敵!」というのですが、なかなか手にとってみようとしないのです。私もその一人で、店の中を一周して「綺麗だった・・・」と帰ってきてしまいました。反対に、「これしかない」という時に、人は購買意欲が高まります。「限定品」「今だけの価格」「残りわずか」というと、「今買わないと手に入らないかもしれない。あとで後悔したくない」という心理が働いて、つい手が出てしまいます。テレビショッピングではいつも「残りわずかです!」と番組の中で強調していますよね。人間は自分の判断で決定しているように思っていますが、心理的な法則にそって意志決定や行動が左右されているというのも事実です。
  
 インターネットが普及して、情報にしても品物にしても沢山あふれている現代社会では、本当に必要なものを必要なタイミングで手に入れるのは意外と難しいのかもしれません。たしかに、「選択肢」は目標が明確な人には有り難いものです。しかし、「何を目指しているか」「何が必要か」が明確でないと迷うだけになってしまいますね。情報があふれる今こそ、「今の私に本当に必要なものは何?」という問いかけが必要なようです。インターネットショッピングで購入ボタンをクリックする前に思い出してみてください。選ぶ楽しみは残しながら、選択肢のマジックに翻弄されないためのちょっとしたコツです。
  

監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2014年03月01日

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